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第514話

 アクセルは、今までのことを簡単に話して聞かせた。  山菜を採っていたら大蛇が襲ってきたこと。その大蛇はロキの息子かもしれないこと。何とか撤退させたが、また追いかけてくるかもしれないこと……等々。 「ありゃ……それはよくないね。お前、目をつけられちゃったんじゃない?」 「そうかもしれない。だから兄上、早くヴァルハラに……」 「まあ落ち着きなさい。そんなに急かされても、腹が減っては元気が出ないよ。とりあえず魚を食べよう。もう少しで焼けるから、お前は水浴びしておいで」 「え、ちょっ……」  兄に汚れた衣類を剥ぎ取られ、パンツ一枚にされ、川岸に向かって軽く背中を押される。  呑気に水浴びなんかしてる場合じゃ……と思ったが、身体が汚れているのは事実。このままじゃ気持ち悪いし、サッと浴びてサッと出て来よう。  アクセルはバシャバシャと川の奥に入っていき、肩まで浸かって砂や埃を洗い流した。時折頭も水に浸け、土っぽさを洗浄する。  ――と言っても、石鹸なしじゃ本当に水浴びしかできないんだが……。  大きな汚れだけ簡単に落とすと、アクセルはさっさと川から上がった。  そして身体を乾かしがてら火に当たりつつ、兄が焼いてくれた魚を食べた。ほとんど調理していないから到底美味しいとは言えなかったが、それでも疲労した身体にはいいエネルギー源になった。 「ラグナロクが終わったら、また美味しい料理作ってね」  微笑みながら、そんなことを言ってくる兄。  アクセルはふと魚を食べる手を止め、ポツリと呟いた。 「ラグナロクが終わったら、俺たち生きていられるのかな……」 「? どういうこと?」 「……俺たちはオーディン様の眷属(エインヘリヤル)だろ? オーディン様がいたから、今までヴァルハラで生活できていたわけで……。だけどロシェが言ってた……『オーディンはフェンリルに喰われて死ぬ』って、その予言がもし当たってしまったら俺たちは……」  不安に駆られ、視線を落とす。

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