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第515話
――考えてみれば俺たちは、ずっと神たちに振り回されてるんだよな……。
生前は神の都合で殺され、神の都合でヴァルハラに集められ、神の都合で神器を持たされ、神の都合で戦争に巻き込まれる。
こんな理不尽なことがあっていいのか。自分たちはこのまま、一方的に巻き込まれるだけなのか。どこかで見切りをつけなければ、神と一緒に滅ぶだけなのではないだろうか……。
「大丈夫だよ」
すると、兄が優しく微笑んできた。アクセルは顔を上げて兄を見た。
「オーディン様がいなくなったからって、すぐさま私たちが消滅するわけじゃない。さすがに棺で復活はできなくなるけど、それ以外は生前と大差ない生活に戻れると思う」
「……そう、かな」
「もちろん、生活する場所なんかは変わるけどね。ヴァルハラは滅ぶだろうし。でも私は、お前が一緒にいればどこでだって生活できるし、どこでだって楽しく生きていける」
「それは……」
「お前だってそうじゃないの?」
兄が腰を上げ、こちらに近づいてきた。そして隣に座り込んで、言った。
「それにさ……例え滅んだとしても、今度は正式に死者の国 の住人になるだけだよ。生活する場所が死者の国 になるだけ。そう考えれば、それほど重大なことでもなくない?」
「え……まあ、それは……そう、かな……?」
「お前なんか特に、女王様に気に入られてるしさ。死んだら死んだで、向こうで歓迎されるよ。瘴気を気にしなくてもよくなるし、それなりに快適に過ごせるんじゃないかな」
「……兄上と話してると、今まで悩んでたことが馬鹿らしくなってくるよ」
でも、この柔軟さが兄のいいところなのだ。どんな環境に置かれてもシリアスにならず、ネガティブになりがちな弟を明るく励ましてくれる。本当に、兄がいてくれてよかった。
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