515 / 2014

第515話

 ――考えてみれば俺たちは、ずっと神たちに振り回されてるんだよな……。  生前は神の都合で殺され、神の都合でヴァルハラに集められ、神の都合で神器を持たされ、神の都合で戦争に巻き込まれる。  こんな理不尽なことがあっていいのか。自分たちはこのまま、一方的に巻き込まれるだけなのか。どこかで見切りをつけなければ、神と一緒に滅ぶだけなのではないだろうか……。 「大丈夫だよ」  すると、兄が優しく微笑んできた。アクセルは顔を上げて兄を見た。 「オーディン様がいなくなったからって、すぐさま私たちが消滅するわけじゃない。さすがに棺で復活はできなくなるけど、それ以外は生前と大差ない生活に戻れると思う」 「……そう、かな」 「もちろん、生活する場所なんかは変わるけどね。ヴァルハラは滅ぶだろうし。でも私は、お前が一緒にいればどこでだって生活できるし、どこでだって楽しく生きていける」 「それは……」 「お前だってそうじゃないの?」  兄が腰を上げ、こちらに近づいてきた。そして隣に座り込んで、言った。 「それにさ……例え滅んだとしても、今度は正式に死者の国(ヘル)の住人になるだけだよ。生活する場所が死者の国(ヘル)になるだけ。そう考えれば、それほど重大なことでもなくない?」 「え……まあ、それは……そう、かな……?」 「お前なんか特に、女王様に気に入られてるしさ。死んだら死んだで、向こうで歓迎されるよ。瘴気を気にしなくてもよくなるし、それなりに快適に過ごせるんじゃないかな」 「……兄上と話してると、今まで悩んでたことが馬鹿らしくなってくるよ」  でも、この柔軟さが兄のいいところなのだ。どんな環境に置かれてもシリアスにならず、ネガティブになりがちな弟を明るく励ましてくれる。本当に、兄がいてくれてよかった。

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