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第518話

 雨風が凌げて、獣にも襲われないような場所。山で野宿をする時は、いつも寝床探しに四苦八苦するのだ。  そういう意味では、戦場の方がまだ夜は過ごしやすいかもしれない。駐屯地に帰ればテントが張ってあるし、夜の見張りを担当している兵士が複数人いるし、少なくとも獣に襲われる心配はない。  ――安心して横になれる場所があるだけでも全然違うんだけどな……。  重くなってきた身体に鞭打ちながら、こっそりボヤく。  ほとんど休みなくここまで来てしまったから、体力的にもいい加減限界だった。先程少しだけ魚を食べたけど、あんなものじゃ全然足りない。一度ゆっくり休まなければ、肝心な時に戦えなくなりそうだ。  陽が完全に暮れる前に、最低限の寝床だけ確保してさっさと休みたい……と思っていると、 「……!」  周囲の空気がピシッと凍り付いた。この感覚は、先程大蛇と遭遇した時とそっくりだった。  アクセルとフレインは、ほとんど反射的に抜刀の構えをとった。 「……これ、お前が遭遇したとかいうロキの息子?」 「……多分そうだ。かなり大きいぞ」 「そうか……。じゃ、協力して何とかしよう」  アクセルは黙って頷いた。  先程と同じ蛇だったら、確かに強敵ではある。が、今回は兄と一緒なのでかなり心強い。一人では手に余る相手でも、兄がいれば撃退できる気がする。  ――ん……?  カサカサ……ザザザ……と、地面を這う音が近づいてくる。  だがよく耳をすませてみると、音が二匹分聞こえていた。よくよく聞かないとわからないが、確かに二匹いる。  けれどわざと一匹に偽装しているみたいで、這うスピードと距離を合わせているように思えた。  ――ちょっと待て、蛇ってそんな連携プレイが可能なのか……!?  ぞっとしかけたのも束の間、目の前の茂みから大蛇が首をもたげて現れた。  アクセルが頭を刺して追い払った大蛇が一匹、そして全くの無傷の大蛇がもう一匹。

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