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第519話

「「シャアァァァア!」」 「っ……!」  二匹の蛇が同時に襲ってきて、アクセルとフレインは左右に避けた。たった今自分のいたところに大蛇の頭がめり込み、周りの土が抉れ飛んだ。  飛び散った土砂に全身を汚されつつ、兄が武器を抜く。 「なんだ、この子たち双子だったの? もっと早く言ってよ」 「悪かったな、今知ったんだよ」  一匹ならどうにでもなったのに、二匹だなんて話が違う。兄がいたとしても、かなり手強い相手だ。視界も悪いし、どうやって戦えばいいのだろう。 「うわっ……!」  避けた直後、大蛇の尻尾が鞭のように唸りを上げてきた。周囲の木々をなぎ倒し、土砂と一緒に先の尖った小枝までもが飛んできた。地味に痛い。 「くっ……」 「怯んでいる場合じゃないよ、さっさと追い払おう」 「わかってる! でもこれでは」 「痛いのが嫌なら、痛みを感じなくなればいいだけのことだろう?」 「……!」  言われて、ハッと我に返った。ヴァルハラ出身の戦士だというのに、肝心なことをすっかり忘れていた。  アクセルは勢いよく小太刀を引き抜いた。そして一気に兄の隣まで駆け寄り、早口に言った。 「……もしかしたら感覚を忘れているかもしれない。先に手本を見せてくれ」 「ふふ、いいよ。お兄ちゃんの姿を見て、めいっぱい興奮するといい」  途端、兄の雰囲気が一変した。目つきが一気に鋭くなり、全身から殺気と闘志が迸る。ふわりとした金髪が逆立ち、大気がビリビリ痺れ始めた。 「ギェアアアアァ!」  獣のような咆哮を上げ、兄が瞬時に大蛇との距離を詰める。そして目にもとまらぬ速さで太刀を振るい、襲い来る尻尾をスパッと斬り落とした。 「兄上……!」  久しぶりに見た、兄の狂戦士モード。人質に行く前だから数ヶ月ぶりか。いつ見ても迫力が桁違いで、見ているだけで鳥肌が立ってしまう。

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