520 / 2197

第520話

 ――ああ、やっぱり兄上はすごい……!  普段の兄も好きだけど、戦っている兄が一番好きだ。生前から優雅で可憐で、それでいて雄々しく戦う兄が大好き。その姿にずっと憧れている。  俺もあんな風に戦いたい。兄上のようになりたい……! 「……タアァァアァッ!」  全身に力が漲ってきて、アクセルは一気に大蛇に向かって跳躍した。兄同様、襲いくる尻尾をかいくぐり、大蛇の胴体を駆け上がって首元に小太刀を突き立てる。 「ギャアァァァ!」  大蛇が暴れるより先に、素早く小太刀を引き抜いて間合いから離れた。  最初に一対一で戦った時より、ずっと身体が軽く動きやすかった。大蛇の動きも手に取るようにわかるし、砂利や小枝が飛んできても全然痛くない。 「忘れてなかったみたいだね、いい子いい子」  いつの間にか隣に寄ってきた兄が、にこりと微笑んでくれる。  アクセルもニッと口角を上げ、それに答えた。 「兄上と特訓したからな」 「そうだね。お前は物覚えがいいから教え甲斐があるよ」  逆上した大蛇が再び襲い掛かってくる。大口を開け、鋭い牙を剥き出しにし、左右から挟み撃ちにしてきた。  だけど、今はもう怖くない。それどころか稚拙な攻めとさえ思ってしまう。  アクセルは上に跳んだ。兄も上に跳んだ。  大蛇が首をもたげ、こちらを見上げた。開いた大口から喉奥の食道まで見えた。  アクセルはわざと開いた口に飛び込んだ。そして落ちていく重力を利用して、喉奥の柔らかい部分に小太刀を突き刺した。 「ギッ……!」  潰れたような声が大蛇から聞こえた。  確実な手ごたえを感じつつ、もう片方の小太刀と共に横に振り抜く。内側から喉を切り開くように、思いっきり引き裂いてやった。 「……ハアアアァアッ!」  雄々しく叫びながら、アクセルは振り抜いた小太刀と一緒に大蛇の中から脱出した。もれなく大蛇の体液で全身がまみれたが、不快感より攻撃への爽快感の方が勝った。

ともだちにシェアしよう!