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第521話※

 喉を内側から切り開かれ、声帯もろとも切られた大蛇は、断末魔の叫びを上げることもなく、どぅ……と崩れ落ちた。首と胴体が離れた大蛇が、地面にひれ伏し末期の痙攣を起こしている。  切った部分からは大量の体液が溢れてきて、それが沁み込んだ草木が徐々に元気を失っていった。この大蛇の体液は植物を枯らす力でもあるのだろうか。ふと自分の肌を見れば、体液を浴びた部分が赤くかぶれていた。  今は狂戦士モードなので痛みを感じないものの、いざ解除したら全身に激痛が走るに違いない。 「よし、こっちもやっつけたかな」  同じく大蛇の首を落とした兄が、晴れやかな笑みをこちらに向けてきた。  だが兄はアクセルと違い、全身体液まみれになっていないし傷ついたところも見られない。ほとんど無傷のまま、あの大蛇を倒してしまったみたいだ。  さすがはヴァルハラで上位三名に入る実力者である(もっとも、今じゃそのランクもほとんど意味をなさないだろうが)。 「……ってお前、大変なことになってるじゃないか。早くどこかで水浴びしないとマズいよ」  兄が目を丸くしてこちらに走ってくる。  アクセルは再び自分の肌に目をやった。「かぶれている」というより「溶けている」状態に近く、薄皮や真皮組織が爛れ、赤い血液がじわじわ沁み出していた。これは痛そうだな、と他人事のように思った。このまま放っておいたら、骨まで溶けてしまいそうだ。 「お前、絶対に狂戦士モードを解除するんじゃないよ? どこか泉が見つかるまでそのままでいなさい、いいね?」 「それはもちろん……。だが、今更さっきの川に戻ることはできないだろう? もうすぐ陽も暮れてしまうし」 「こうなったら、ヴァルハラまで一気に駆け抜けよう。そうすればオーディン様の泉がある。他の場所は更地にされてしまったけど、そこだけは私たちのために残しておいてくれたんだ」 「そうなのか? じゃあこのままヴァルハラまで走ろう」

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