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第527話(フレイン視点)
ピピも嬉しそうに一声鳴いた。
フレインはしばらく泉に浸かり、弟が目覚めるのを待った。
――これから徐々に、こういう戦いが増えていくわけか……。
既にラグナロクは始まっているというから、先程の大蛇との戦闘もラグナロクの一部と考えていいと思う。戦中に所用で山に入ったら、敵兵と遭遇してバトルした……みたいなところだろうか。まあよくあることだ。
――しかし、いくら泉が大きくなったって、毎回これじゃ身が持たないな……。
たまたま遭遇した蛇にすら、片腕を失ってしまうようなレベルなのだ。弟に至っては瀕死の重傷を負ってしまった。これが本格的な巨人相手になったら……と考えると、うっすら背筋が寒くなってくる。
ラグナロクは滅びのための戦だ。神々と巨人、本気で戦ったら双方無事で済むはずがない。全世界の全生物を巻き込んで、互いを滅ぼそうとし、結果的に両者とも滅ぶ。なんと不毛な争いなんだろう。
――私だって戦は嫌いじゃないけどさ……。
これでは何のために戦っているのかわからない。戦をするなら、それなりの大義名分や目的があるはずだ。でもラグナロクに至っては目的すら見えてこない。
そもそも始まったきっかけは「ロキの企みによって愛息子・バルドルを殺されたオーディンが、怒って巨人族に宣戦布告したから」ではなかったか? そんなの、その場でロキを捕らえて、拷問なり罰を与えるなりすれば済んだことだ。わざわざ私怨で戦を始めることはない。
――どうもおかしい……オーディン様は一体何がしたいんだ……?
オーディンがラグナロクを始めたのは、何か別の目的があるのではないか。あるとしたら、その目的とは何なのか。それがわからない以上、全てが滅ぶまでラグナロクは終息しないのではないか……。
「お。先客がいると思ったらお前さん達か」
「……!」
覚えのある声が聞こえ、フレインはそちらに目をやった。
泉の反対側にある岩場の上に、お馴染みの友人たちが揃っていた。
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