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第529話(フレイン視点)

 何気なくボヤいたら、ミューがあっさりこう言った。 「戦争に明確な終わりはないよ。どっちかが降参するか、どっちかが滅びるまで戦いは続くんだ」 「でしょうね。で、我々は戦が続く限り永遠にこき使われるわけです。ああ……考えるだけでうんざりしてきました」  ユーベルが大袈裟に天を仰ぐ。彼は貴族出身のせいか、優雅に過ごせない日が長く続くと徐々にうんざりしてくるのだろう。気持ちはわからんでもない。フレインだって、早く平和になって弟とのんびりデートしたいし。 「ま……俺たちはオーディン様の眷属だから、駒として戦うしかないんだけどさ」  と、ジークが現実的なことをのたまう。 「とはいえ俺たち、ラグナロクが始まってから『ここをこうやってこういう風に攻めろ』みたいな作戦は一度も受けてないだろ? 乱戦状態の戦場にいきなり放り込まれて、ただ巨人相手に戦っているだけだ。頭数を減らすにはいいかもしれんが、戦略的に『それってどうなんだ?』と思うことは多々あるね」 「やっぱりそうなのか。私も戦にしては変だなって思っていたんだ。なんか目的があやふやなんだよね。私怨でここまで大きな戦を起こすのもおかしいし」 「だよなぁ……。神々のパーティーでバルドル様が殺されたのは気の毒だけどさ、オーディン様だったら交渉次第でバルドル様を復活させることくらいできるはずだろ? それならロキに罰を与えてバルドル様を復活させて、それで全てチャラになるんじゃないか? ラグナロクを起こす必要もない」 「そうだよね。私もそこが引っ掛かって」  上位ランカーは腕っぷしだけでなく、それなりの頭脳も持っている。  故にラグナロクに対する疑問も当然のように抱えているのだが、だからと言って状況が好転しないのは辛いところだ。  案外、何も考えずにただ目の前の敵を倒す雑兵になりきった方が、楽なのかもしれない。  ユーベルもやれやれと溜息をついた。 「まったく……意味もわからず戦わされるのは正直疲れますよ。ミューはどう思います?」

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