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第536話

「ありがとう、ピピ。きみのおかげで助かった」 「アクセル、すき」 「ああ、俺も大好きだ。あとでいっぱいお礼するからな」 「ぴー!」  あの小さくて臆病だったピピが、アクセルを守るために頑張ってくれた。それが無性に嬉しかった。 「ところでお前、いい加減お腹空かない? ご飯食べに行こうよ」  と、兄に言われ「はて?」と首をかしげる。こんな何もないヴァルハラで、ご飯を食べる場所なんかあるんだろうか。 「あなたは知らないでしょうが、今のヴァルハラは地下に居住スペースがあるんですよ。地上は戦場になりますので、その対策です」 「そうなんですか……。じゃあ寝起きは全て地下になったんですね?」 「ええ、優雅さには欠けますがね」  やれやれと息を吐くユーベル。彼の自慢の髪は戦中のせいか、少しパサついていた。ファッションや美容にこだわりのある貴族サマにとっては、ラグナロクは少々不便なのかもしれない。 「さてと、じゃあ俺たちもそろそろ戻るかね。腹が減っては戦はできんって言うしな」  と、ジークがザバッと泉から出る。彼は下着一枚で泉に入っていたようだが、その見事な肉体にほう……と溜息が漏れた。リーチの長い槍をぶんぶん振り回しているような人だから、腕も立派だし背筋もよく鍛えられている。  ――……なんか不安になってきた。  こっそり自分の身体を見下ろす。人質の期間もある程度鍛錬していたとはいえ、ヴァルハラで頑張っていた時と比べると明らかに鍛錬の量は少なくなっていた。山の中で大蛇と戦った時も、若干素振りの速度が落ちている気がしてヤバいなと思ったものだ。  今上位ランカーと肉体を比べられたら、恥ずかしくて立っていられないかもしれない。 「僕もお腹空いたー。ご飯食べるー。今日のご飯何だっけ?」  ミューもバシャバシャと泉から上がっていく。彼の肉体はまだ見たことがないが、身体は小さくてもよく鍛えてるんだろうなと思った。脚の筋肉が綺麗だから間違いない。

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