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第538話

「……やめておきなさい、胸焼けするだけです。食欲が失せますよ」  ユーベルがミューの肩を掴み、強制的に回れ右をさせる。  ジークも軽く笑いながら、ひらひらと手を振った。 「隠れて覗き見するくらいならいいが、加わるのはやめた方がいいぜ。フレインに首斬られちまう」 「そっかー。仲良し兄弟が普段どうイチャイチャしてるのか、見てみたかったんだけどな」 「お前さん、意外と悪趣味だな。他人のセックスに興味あるのか」 「他人の……というより、兄弟のイチャイチャかなー。僕、兄弟が仲良かった記憶がないからさー、単純に興味があるの」 「わたくしも、兄弟の仲がよかった記憶はありませんけどね。だからと言って、二人の情事を覗き見したいとは思いません」 「そっかー、ユーベルは優雅な食事の方が興味あるんだねー」  ……などと好き放題に言って、泉から出て行く三人。  他人の視線がなくなった途端、兄はこれ幸いと裾から手を突っ込んでくる。怪しい手つきで腹筋から胸元を撫で上げられ、思わず背筋がぞくっとした。 「ぴー」  ピピが一声鳴いた。  そうだ、こんなところでやらかしている場合じゃない。今はラグナロクの真っただ中なのだ。発散している最中に敵に襲われたらどうする。ピピにも呆れられてしまうだろう。  アクセルは兄の手を掴み、首を捻って訴えた。 「待ってくれ兄上……やっぱり今こういうことをするのはマズいと思う……」 「え、なんで? みんな出て行ったし、遠慮することないじゃない」 「そういう問題じゃないだろ……! ピピもいるし、今はラグナロクの最中なんだぞ」 「いい戦士ほど、戦時中に上手いこと発散してるものだよ。だからみんな出て行ってくれたんだ。戦った後の興奮を鎮めるためなんだから、至極真っ当なことだよね?」 「そっ……!」 「それに、何だかんだ言ってお前も興奮してるじゃない」 「っ……!」  背後から股間を撫で回され、反射的に腰がびくんと跳ねた。

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