551 / 2014
第551話*
次の瞬間、先端から勢いよく熱いものが放たれた。
「んッ……! んぐ、ん……ごほっ!」
噎せそうになりながらも、喉奥に出されたものをどうにか飲み込む。吐き出すのを無理矢理我慢したせいで、生理的な涙が浮かんできた。
「う……ごほっ! げほっ……!」
ようやく頭を解放され、アクセルは何度か咳き込んだ。気管に入りかけた粘液を押し出し、一生懸命息を整えようとする。
すると兄はにこりと微笑み、軽く顎を掴んで顔を上げさせてきた。
「ありがとう、とっても気持ちよかったよ」
と、触れるだけのキスを見舞ってくる。
ご褒美のような口づけのせいで、今までの羞恥が全部吹っ飛んでしまった。ヤドリギに縛られたり辱められたりしたのに、たったそれだけでなかったことにできるのも、なかなか単純である。自分でも呆れるくらいだ。
「ぴー!」
その時、タイミングよくピピの鳴き声が聞こえた。
アクセルは慌てて兄から離れ、泉に潜って全身の汚れを落とした。汗や体液でどろどろだった身体が一気にさっぱりする。
水面に向かって上昇し、泉から顔を出したら、ちょうどピピが帰ってきた。
アクセルは水辺に上がり、鼻面を寄せてきたピピを撫でた。
「おかえり、ピピ。待たせてすまなかったな」
「ぴー」
「これから俺たちは地下で食事をするんだが、ピピはどうする? 何かご飯は食べたのか?」
ふるふると首を横に振るピピ。途端、ぐぅぅ……という腹の虫が聞こえてきた。自分のではなく、ピピのものだった。ピピもそれなりにお腹が空いているようだ。
「きみは普段何を食べているんだ? ニンジンか?」
「ぴ?」
「うさぎだからニンジンが好きっていうのは、安易な発想だよねぇ? うさぎでも時にはお肉食べたくなることあるでしょ?」
と、兄がピピに話しかける。
――いや、兄上が肉を食べたいだけだろ……。
やや呆れながら兄を見たら、「それはさておき」と兄が話を変えてきた。
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