552 / 2013

第552話

「地下への入口、ピピちゃんにはちょっと小さすぎると思うんだ。ご飯は持ってきてあげられるけど、一緒に地下に入ることはできないんじゃないかな」 「え……そうなのか?」 「うん。それに地下そのものもあまり広くないからね。ピピちゃんが生活する場所はないと思うよ」 「そうか……」  言われてみれば当然か。  地下の施設は、緊急避難場所のようなものである。そんなところに個人的な動物をつれて行くことはできない。ましてやこんな大きな生き物を。 「ピピ、地下には一緒に行けないんだってさ。残念だな……」 「ぴー……」  しょぼん、と耳を垂らすピピ。  明らかに悲しそうな顔をするので、アクセルは慰めるように言った。 「でも、ご飯はちゃんと持ってくるから。何が食べたい? できるだけリクエストには応えるぞ」 「ぴ……」  ピピはちょっと首を傾げた後、甘えるように身体をすり寄せてきた。「持ってきてくれるなら何でもいいよ」と言っているように見えた。  まあ、自分も地下にどんな食料が保存されているのか知らないから、リクエストを言われたところで叶えられない可能性も高いのだが。 「うさぎと言ってもピピちゃんは神獣だから、案外何でも食べるんじゃないかな。……さ、そろそろ地下に行こう。身体の汚れもとれたしね」  兄に促され、アクセルは兄の後ろをついていった。ピピも入り口まではついてきてくれた。  地下への入り口は、意外にも泉のすぐ近くにあった。岩場の間に隠れるように、出入り口と思しき穴が開いている。ちょうど人間が通れるくらいの大きさで、その先に緩い階段が延々と続いていた。  アクセルは階段を下る直前、ピピを振り返って念を押した。 「じゃあピピ、ちょっとここで待っててくれ。ご飯用意したらすぐ戻ってくるからな」 「ぴー」  素直に頷いたピピを見届け、早速階段を下りた。

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