555 / 2013

第555話

 ならば、その予言そのものを覆してやればいいのではないか。オーディンを死の恐怖から解放してやればいいのではないか。  そうすれば、この不毛な争いも終わる。再び平和な世界に戻る。  アクセルは顔を上げ、言った。 「兄上、予言を覆すにはどうしたらいいんだろう」 「ええ? そんなのわからないよ。というか、それができるんならオーディン様だって最初からこんなことしないんじゃない?」 「それはそうかもしれないが、考える価値はあると思うんだ。死の女王様に会えたんだから、予言をした神にも会えるんじゃないか?」 「……だといいけどね。でも、オーディン様にすらほとんど会ったことがないのに、私たちが巫女様に会えるとは到底思えないんだよなあ」 「巫女様って……?」 「オーディン様に死の予言をした張本人だよ。名前は確か『ヴォルヴァ』だったかな? この世界の創造から終末、再生までを予言したって言われてる」 「そんなすごい巫女様がいるのか……。スケールが大きすぎて想像できないな」  そう言ったら、兄はやや呆れた目をこちらに向けてきた。 「というかお前、巫女様のことを何一つ知らないのに『予言を覆せるかも』って思ってたわけ? さすがにそれは考えナシすぎるんじゃないの? 子供じゃないんだから、思い付きで物を言わないようにね」 「す、すまない……。だけど、ラグナロクを終わらせるにはそれしかないと思って……。オーディン様が死の恐怖に憑りつかれているのなら、その根本から覆してやらないと……」 「だから、それができるんだったら最初からそうしてるって。予言を受けたのはオーディン様なんだから、巫女様に直接掛け合って予言を覆すようお願いしているはずだよ。それが無駄だったから、今こうやってラグナロクが起きてるんじゃないか」 「それは……」

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