556 / 2013

第556話

「オーディン様ができなかったことを、たかが眷属(エインヘリヤル)の私たちができるはずないよ……。予言を覆すことは不可能だと思った方がいい。だから、それ以外の方法で私たちがどう生き延びるか考えなければね」 「…………」 「そんなことより、早くご飯食べにいかなきゃ。難しいことを考えるのはその後さ」 「あ、ああ……」  仕方なくアクセルは、兄に続いて階段を下りた。  浅くて長い階段をずっと下りていったら、大きな観音開きの扉にぶち当たった。分厚い鉄製で、かなり重そうな作りになっていた。 「よいしょ……っと」  兄と一緒に重い扉を開いたら、ただっぴろい食堂のような場所が現れた。  折り畳み式の簡素なテーブルがずらっと並んでおり、当たり前に食事をしている者もいれば、談笑している者、書物を読み漁っている者もいた。幅広い意味のリビング・ダイニングという感じだった。 「ようお二人さん、遅かったじゃないか。随分長いことお楽しみだったみたいだな」  一足先に地下に下りていたジークが、こちらに声をかけてくる。彼はユーベルとミューと一緒に、地図やら書物やらを広げて何かを話し合っているところだった。 「……で、どうする? ここを攻めるには、あまりに戦力が心もとないぞ」 「囮部隊と突入部隊に分けられればいいんですけどね……。ただ、中で何があるかわからないので、突入部隊にもある程度の戦力が求められます」 「囮が外の敵を全滅させたら、中の突入部隊と合流すればいいんじゃなーい?」 「……ま、理想はそうなんだけどな。ただ、外の敵を全滅させるのにどれくらい時間がかかるか……。そもそも全滅させられるのかもわからんだろ」  どうやら、どこかを攻略する作戦を考えているようだった。一体どこを攻めようとしているのだろう。気になる。 「アクセル、ご飯とりに行こうよ。ピピちゃんにも持って行ってあげないと。お腹空かして待ってるよ」 「う、うん……そうだな」  後ろ髪を引かれる気分だったが、兄に促されてアクセルは厨房に食事をとりに行った。

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