558 / 2013
第558話
口の周りについたシチューを舌で舐め、嬉しそうにこちらを見てくる。
「ぴー」
「もう完食か。余程お腹が空いていたんだな」
「ぴー」
「それじゃ全然足りないんじゃないか? 俺の分も少し食べていいぞ。ただし、全部食べないようにな」
「ぴー♪」
ピピはうんうんと頷くと、アクセルのシチューも一気に半分ほど食べてしまった。煮込まれた肉や野菜をむしゃむしゃと噛み砕き、満足げにこちらを見つめる。そしてこう言った。
「アクセル、すき」
「ありがとう、俺も好きだよ」
「アクセル、ありがと」
「どういたしまして」
アクセルは隣に寝そべってきたピピに寄りかかり、自分も食事することにした。ふわふわのクッションみたいで心地よかった。このままここで寝てしまってもいいくらいだ。
リラックスして気持ちも緩んできたのか、いつの間にかピピに向かって喋っていた。
「さっきな……兄上に『予言を覆すのは不可能だ』って言われちゃったんだ」
「よげん?」
「もとはと言えば、このラグナロクはオーディン様が死の予言を受けたことから始まるんだ。それで死ぬのが怖くなったオーディン様は、『それなら自分以外の全てを滅ぼしてしまえ』って思ったらしい」
「ぴー……」
「だからさ、俺は『予言そのものを覆してやればいいんじゃないか』と考えたんだが……さっき兄上に『それは絶対不可能』ってダメ出しされてしまった。それでちょっとモヤモヤしてるんだ……」
「もやもや?」
「うん……いや、兄上の言うことも理解はできるんだよ。予言を覆せるなら、オーディン様だって最初からそうしてただろうし。でも、予言に従ってしまったら俺たちは滅ぼされるのを待つしかなくなる。どこに逃げたって同じことだ。だから根本からどうにかするしかない。そう思って提案したんだけど、『無理』って言われちゃって……」
「ぴー……」
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