559 / 2013

第559話

「なあ、自分以外の全てを滅ぼすってどういうことかな。神の世界も巨人の世界も、地上も、死者の国も、全部滅ぼしてしまうってことなのかな。神も巨人も人間も……死者の国にいる者も数えきれないほどいるのに、本当に自分以外、皆殺しにしちゃうのかな。そんなこと、実際に可能なのかな。死者の国すら滅んでしまったら、死んだ人は一体どこへ行くんだろう……」  疑問が次々と口を継いで出てくる。こんなこと口にしたところで答えが出ないことはわかっているけれど、それでも言わずにはいられなかった。それだけ自分も不安なのだ。どうしたら生き延びられるか、その答えがわからなくて不安なのだ。  もう、大切な人たちと死に別れるのは御免だから……。 「もう一度、平和なヴァルハラに戻らないものかな……。いや、ヴァルハラじゃなくても、平和な世界に戻ってくれれば何でもいいんだが……。そしたら、新しく大きな家でも建てて、兄上とピピと生活できるのに」 「…………」 「……ははは、ごめん。ピピにはよくわからないよな。あまりこういうこと言うと、兄上にまた『余計なことばかり考えて煮詰まってる』って叱られちゃう。兄上みたいにもっとおおらかに生きないと、長生きできないよなぁ……」  そう苦笑したら、ピピが顔をすり寄せてきた。そしてたどたどしいながらも、こう言ってくれた。 「アクセル、すき。ピピ、いっしょ。ずっといっしょ」 「ありがとう……。きみがいると本当に癒されるよ……」 「アクセル、すき」 「ああ、俺も大好きだ。一緒に頑張って生き延びような」 「ぴー♪」 「……というか、今更だけどきみ、少し語彙が増えた? 新しい言葉覚えたのか?」 「すこし」  イントネーションも少し怪しかったが、それが逆に可愛かった。言葉を覚えたての子供みたいだ。本当にピピは癒される。

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