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第560話(アクセル~フレイン目線)

「……はあ」  パンとシチューを完食し、ピピに寄り掛かっていたら猛烈な眠気が襲ってきた。  今更ながら、バルドルの屋敷を出て今に至るまで一睡もしていなかったことに気付く(大蛇の毒に溶かされて死にかけたのはノーカウント)。道理で疲れているはずだ。 「ピピ……ちょっとここで寝ていいかな……。もう地下に戻るのも面倒なんだ……」 「ぴー」 「……ちょっとだけだから……誰か来たら起こしてくれ……」  そう喋りながらも、ほとんど呂律が回らなくなっていた。  ――こんなところで寝てたら、兄上に怒られそうだな……。  まあ、怒られたらその時はその時だ……と開き直り、アクセルは目を閉じた。暗闇に飲み込まれるように、一瞬にして眠りに落ちた。夢すら見なかった。 *** 「……それで? 何か作戦考えた?」  フレインは、一足先に話し合っていた友人たちに声をかけた。  ジーク、ユーベル、ミューの三人は数枚の地図をテーブルに広げながら、今後の作戦について意見を交わしていた。 「俺たちが取るべき行動は、大きく分けて三パターンだな」  と、ジークが一枚目の地図を指差す。 「その一。今まで通り適当に戦いつつ、タイミングを見計らって戦線離脱する。ただ、ラグナロクが全世界を巻き込んだ戦であるならば、離脱する場所すらない可能性がある」 「……そうだね。次は?」 「その二は、思い切ってオーディン様を殺害してしまうことです。そうすれば、『自分以外の全てを滅ぼす』という馬鹿げた目的だけは阻止できます。ただし、それでラグナロクが終わるかはわかりませんし、そもそもオーディン様がいなくなった後、我々眷属(エインヘリヤル)がどうなるかは未知数です」 「……だよね。それから?」 「三つ目は、予言そのものを覆すことー」  と、ミューが言い出したので、フレインは少し目を丸くした。 「それって、ほぼ不可能なことじゃないのかい?」 「だと思うでしょ? でも調べてみたらそうでもなかったんだ」

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