561 / 2013
第561話(フレイン目線)
ミューはペロペロキャンディーを舐めながら、続けた。
「世界の創造、滅亡、そして再生までを予言した巫女様なんだけど、その予言が刻まれている『石碑』ってのがどこかにあるらしくてね。早い話が、それを神器で破壊しちゃえばいいんだってさー」
「……そんなシンプルな方法で予言が覆るの? 逆に裏がありそうなんだけど……」
「ご明察だな。当然、この話には裏がある」
ジークが頬杖をついて、言った。
「まず第一に、その『石碑』がどこにあるかわからない。神の国なのか、巨人の国なのか、はたまた死者の国にあるのか、一切の情報が入ってこないんだ」
「……そりゃそうだね。大事な予言が書かれている石碑なんだから、簡単に見つかる場所に置いてあるはずがない」
「それな。……でも、運よく石碑が見つかっても次の問題がある」
嫌な予感しかしなくて、フレインは内心身構えた。石碑を見つけて破壊すればいいだけの話なら、オーディンだって最初からそうしているのではないか。それができなかったから、今こうなっているのではないか。
では、それができない理由とは……?
「消えるんですよ、石碑を破壊した者が」
「……消える……? 存在がってこと?」
「そうです。しかもただ消えるわけじゃありません。『存在していたことすらなかったこと』になります」
「それはつまり……」
「要するに、その人との思い出すら残らないということですよ。最初から存在していなかったかのように、生きていた痕跡自体がなくなってしまいます。あなたで例えるなら、弟くんが『俺は最初から一人っ子だった』と思い込むことでしょうか」
「それは……ちょっと嫌だな」
それを聞いて合点がいった。そんなペナルティーがあるのなら、さしものオーディンも石碑を破壊することはできない。
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