566 / 2013

第566話(フレイン~アクセル視点)

 ――私の役目は、弟がのびのび生活できる環境を整えることだからね……。  ヴァルハラに来たばかりの時もそうだった。荒れていたヴァルハラの治安改善のために、長い年月をかけて奔走した。  ラグナロクの時も同じだ。いざという時は、自分の身を犠牲にしてでも弟を守る覚悟はできている。  もちろん、それは本当の最終手段だが……。 「愛してるよ、可愛いアクセル……」  弟の前髪を掻き上げ、軽く額にキスを落とした。アクセルは少し身じろぎしたが、起きる気配はなかった。  苦笑しつつ、フレインは無防備な弟を抱き締めた。確かな温もりが今は心地よかった。 ***  明るい日射しが瞼に沁みて、アクセルは寝惚けたまま目を開けた。  ――ん……? やけにいい天気だな……。  晴れた空が直接見える。雲ひとつない青空だ。太陽が眩しい。  何でベッドで寝ていないんだろう……と一瞬考えかけたが、そう言えば夕べ、ピピと食事をした後、猛烈に眠くなったから一度仮眠したんだ……と思い出す。ふかふかで温かいピピの毛並みを背中に感じた。  というか、仮眠のつもりだったのに朝まで爆睡してしまったようだ。一応ラグナロクの最中なのに、外で堂々と眠りこけるなんて大丈夫か、自分は。また「危機意識が足りない」と兄に怒られてしまう。 「ぴー」  アクセルが起きたことに気付いたのか、ピピが身体をすり寄せてきた。 「おはよう、ピピ。いつの間にかすっかり寝入ってしまったみたいだ……」 「ぴー」 「兄上はまだ地下にいるのかな。これからどうするのか、相談しないと……」  そう言ったら、ピピは首を横に振った。そしてこんなことを言い出した。 「フレイン、でかけた」 「……えっ?」 「ともだちとでかけた。アクセル、おるすばん」 「えええ!? それって、俺を置いてどこかの戦場に行っちゃったってことか!?」  うんうん、と頷いたピピを見て、アクセルは頭を抱えたくなった。

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