567 / 2013

第567話

 ――何で勝手に出陣しちゃうんだよ!  爆睡していた自分も自分だが、それなら何故起こしてくれなかったのか。死ぬ時は一緒だって約束したのに、どうして黙って行ってしまうのか。さすがに酷すぎる。  アクセルは急いで立ち上がり、ピピに言った。 「ピピ、兄上がどこに出陣したかわかるか?」 「ぴー……」 「そこまでは聞いてないか……。でも地下に戻れば知ってる人がいるかも」  ピピにその場で待っているよう言って、急いで地下施設に駆け下りた。  地下の雰囲気は特に変わり映えなかったが、数名の戦士(エインヘリヤル)たちが大広間の奥を行ったり来たりしていた。それぞれ工具や掘削機等を手にしているが、一体何をしているのだろう。 「あの、ちょっといいか?」  アクセルは作業中の一人に声をかけた。 「兄上……フレインがどこに行ったか知らないか? 何か知っていたら教えてくれ」 「ああ、フレイン様ですか。それなら朝早く、ジーク様とミュー様とお出掛けになりましたよ。どこに行ったかまでは知りませんが、拡張工事の材料を集めに行ってるんじゃないですかね?」 「え? 拡張工事?」 「ええ、なんか地上へのショートカットになる梯子を作るつもりらしく。出入口があの階段ひとつじゃ、いざって時に逃げられませんからね。それで梯子作りのついでに、地下施設全体を拡張工事しようってことになったんです」 「そうなのか……。じゃあ、出陣したわけじゃないのかな……」 「違うんじゃないですか? ユーベル様が残っていらっしゃいますし」 「えっ!? ユーベル様、ここにいるのか? 今どこに?」 「個室で優雅なティータイムを過ごしているんじゃないかと……」  話が終わるより先に、アクセルは急いで個室に走った。  地下施設は狭いという話だったが、ユーベルの個室は各戦士の個室よりゆったりした作りになっており、インテリアもそれなりに充実していた。棚に豪華なティーカップやワイングラスがずらりと並べられている。  さすがは元貴族……と思ったが、ユーベルにとってはこれでも優雅には程遠いのかもしれない。

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