568 / 2013
第568話
「おや、弟くんではありませんか。あなたもわたくしとお茶を飲みに来たのですか?」
「いえ、そうではなく……。兄がどこへ行ったのか教えていただきたくて」
「ああ、そういうお話ですか……。それはあまり粋ではない話題ですねぇ……わたくしのティータイムにはふさわしくありません」
「……すみません。非難は、俺に黙って勝手に出て行ってしまった兄の方にお願いします」
そう言ってアクセルは話を戻した。
「それで、皆さんどこへ行ったんですか? ジーク様とミューも一緒だと聞きましたが」
「作業している他の戦士たちを見ませんでしたか? 今は地下施設の拡張工事中です。なので、資材がいろいろ不足してるんですよ。あとは食料ですかね。彼らはそれを調達に行ったんです」
「……そうなんですか? じゃあ俺も手伝いに行きます。そういう資材集めは、人手は多い方がいいでしょうし」
と食い下がったのだが、ユーベルはやや面倒臭そうに首を横に振った。
「生憎、具体的な場所までは聞いていないんです。彼ら、狩りをする時はその場の雰囲気で気まぐれに場所を変えるので。追いかけても合流できないと思いますよ」
「それでも、大声で呼べば兄が気付いてくれるかもしれない。どっちの方向に行ったかだけでも教えてください」
「今はラグナロクの最中ですよ。例えば、山の中で大声なんか出したらどうなります? 敵に自分の居場所を教えるようなものです。下手に追いかけるより、あなたは拡張工事を手伝っていた方がいいと思いますね」
「だけど、もし兄に何かあったら……。俺たち、今度こそ『死ぬ時は一緒に』って誓ったんです」
「…………」
「それに、資材集めでも何でも、一言くらい言ってから出ていくものじゃないんですか?」
「簡単な資材集めだからこそ、何も言わずに出て行ったんですよ。それに、今はジークやミューも一緒です。心配するだけ無駄ですね。というか、あなたが合流したらむしろ足手まといになるのでは?」
痛いところを突かれ、アクセルは言葉に詰まった。ユーベルは更に言った。
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