571 / 2013
第571話
「ミューは遊び好きですから、楽しそうとなればあなたと一緒に出掛けてしまう。ジークは情に訴えられると折れやすい。でもわたくしはそうじゃない。こう見えて、拷問するのも得意なんですよ。しかもグレイプニルは、わたくしが解こうとしない限り決して解けない。剣でいくら斬っても斬れないという特徴もあります。つまりわたくしは、縛ったままあなたを斬り刻むことができるというわけです。拷問には最適な神器だと思いませんか?」
「なっ……!」
「ああ、安心してください。殺しはしません。ちょっと両脚を斬って、歩けないようにするだけですから。フレインが帰ってきたら泉に入れてあげますし、問題ありませんよね?」
いつもの口調でサラッとそんなことを言ってしまえるユーベルが、やたらと恐ろしく感じる。
優雅な貴族として振る舞っていても、やはり彼もヴァルハラに招かれたオーディンの眷属 なのだ。戦士ランキング第四位の強者なのだ。そんじょそこらの戦士とは、もともとの迫力が違う。
アクセルは腹の下にぐっ……と力を込め、震えるのを抑えながら聞いた。
「……何故そうまでして俺を止めるんです?」
「あなただけではありませんよ。わたくしは地下にいる全ての戦士を監視する役割を負っていますから。……まあ、その中でも目を光らせておかなければならない戦士は何人かいますけどね。あなたはそのうちの一人です」
「だから何故……?」
「あなたを自由にさせると、計画が狂う可能性が高いからですよ。神と巨人が集まるパーティーの際も、あなたはロキにヤドリギのことを喋ってしまった。事を大きくしないよう、我々があれこれ練っていた計画が全部水の泡です。フレインは一生懸命あなたの尻拭いをしていますけど、それだって限度というものがあります」
「っ……」
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