573 / 2014
第573話
アクセルは顔を上げた。そして真っ直ぐユーベルを見て、言った。
「ユーベル様、兄はどこに行ったんですか。本当に素材集めに行ったんですか? それとも危険な場所に出陣に行ったんですか? どちらでもかまいません。俺は本当のことが知りたい……」
「……あなたの言いたいことは理解しました」
ユーベルがこちらに近付いてくる。動けないアクセルの顎を掴み、舐めるように顔を凝視し始めた。少し背筋が寒くなった。
「ま、だからと言ってあなたの拘束を解くことはしませんけどね。わたくしの役目は、あくまであなたを外に出さないこと。情に流されることはあり得ません。それに、フレインの行き先を教えたところであなたがおとなしく待機しているとは思えませんし」
「そんな……。俺はただ、兄上が心配なだけで」
「フレインはあなたの心配など、必要としていないと思いますね。あなたより遥かに強いし、いざという時ほどしっかりしています。緊急時に頼りにならない――それどころか、足を引っ張っているのはあなたの方です。フレインは今、あなたという重荷がなくてスムーズに仕事ができていることでしょう」
「っ……」
「あなたが外に出ることは、フレインにとってマイナスでしかないんです。身内の心配もわかりますが、余計なことはしないのが彼のためですよ。……それでも言う事を聞けないなら本格的な拷問に入らざるを得ませんが……それでもいいのですか?」
ユーベルがますます顔を近づけてきて、本能的な危機を悟った。
――マズい、これって……。
怪我することに慣れている戦士を、普通に痛めつけてもあまり効果はない。両脚を切断したところで、泉に入ってしまえば全快してしまう。
だから、泉では治せないところを傷つけるのだ。それがどこかわからないほど、アクセルは鈍くなかった。
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