574 / 2013

第574話

「ユ、ユーベル様……」 「おや、顔色が変わりましたね。真っ青ですよ」 「っ……!」 「そういう顔をされると、拷問する側はますます燃えてくるんですよね。加虐癖のある人は特に」 「……!?」  ユーベルの手がススス……と首筋を滑り、服の隙間から素肌を撫でてくる。  それでますますぞっとしてしまい、無意識に身体が震えた。本当にこのままユーベルに拷問されるのかと思ったら、じわりと涙が滲んできた。  ――嫌だ……!  兄以外の人に犯されるなんて、想像するだけで怖気が走る。  これはあくまで拷問――身体の中を傷つける暴力に過ぎないはずなのだが、どうしてもただの暴力として片づけることができない。それには兄への気持ちが大きすぎる。  こんなことなら、最初から両脚を切断されていた方がよかった。一時的な激痛を味わっても、兄への気持ちを踏みにじられるより遥かにマシだった。  どうにか自力で逃げ出せないかと身体を揺すってみたが、相変わらずグレイプニルはびくともしない。ユーベルの部屋は狭いし、ほとんど逃げ場もなかった。まさに絶体絶命だった。 「……あっ」  胸の突起をピン、と弾かれ、反射的にびくっと肩が跳ねる。  それだけでぽろりと涙がこぼれ落ち、アクセルは顔を俯けながら懇願した。情けないが、これ以上は耐えられそうになかった。 「ユーベル様、もう許してください……!」 「おや、降参ですか。案外あっさり白旗を上げるのですね」 「っ……」 「まあ、あなたは普段からフレインに甘やかされていますからね。こういった拷問に耐えられないのは承知していました」  そう言って、ユーベルが手を離す。  淫靡な感覚が肌から消えて、アクセルは長い息を吐いた。身体の自由は奪われたままだが、乱暴されるよりはいい。  ユーベルは何事もなかったかのように席に戻り、ティーカップを取り上げた。そして言った。

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