575 / 2013
第575話
「わたくしの役目は他の戦士を見張ること。あなたがフレインを追いかけさえしなければ、無駄に労力をかけることもありません」
「は、はあ……」
「あなたも、最愛の兄から『足手まとい』扱いされるのは不本意でしょう。そこでおとなしくしていらっしゃい」
「…………」
足手まとい……そう言われたのはこれで三度目だ。その度にぐさぐさと心臓を抉られるような心地がして、悲しみと歯痒さで泣いてしまいそうになる。
「……俺はそんなに足手まといですか?」
「はい?」
「俺は、いつになったらあなた達の力になれますか? 作戦の全貌を教えてくれとはもう言いません。だけど、俺だって少しは役に立ちたい。これでもランクはかなり高いはずなのに、何故いつまでもお荷物扱いなんですか……?」
心の奥底にずっと巣食っている不満を、ついユーベルにぶつけてしまう。
早く兄に追いつきたい。兄のようになって同じ戦場に立ちたい。その一心で努力し続け、ヴァルハラの戦士ランクも一生懸命上げてきた。おかげで、どうにかランキング三〇位以内に入れている。
兄やユーベルに比べればまだまだかもしれないが、それでも「足手まとい」とこき下ろされるほど弱くはないつもりだ。どうしていつまでも「戦力」として認めてもらえないのか、それが悔しくて悲しかった。
「人には適材適所がありますから」
と、ユーベルがティーカップを揺らした。
「申し訳ないですが、あなたは視野がやや狭いので、全体の状況を見て瞬時に物事を判断するのは向いていません。前線に出たとしても、一兵卒程度の働きしかできませんよ」
「そんなこと……」
「かといって、一兵卒扱いするにはあなたはランクが高すぎます。無駄死にさせるのは非常にもったいない。あなたは前線で勇ましく戦うより、後方で皆を守っていた方が合っているんです」
「…………」
そう言われてもなかなか納得できず、アクセルは唇を曲げて床を睨んだ。
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