583 / 2013

第583話

 早速アクセルは、チェイニーと一緒に積み上がった肉や魚を捌いていった。 「それにしても、よくこんなに狩って来られたな……。ここまで大量の食材を調理するのはかなり骨が折れるぞ」 「そうだろうね。でも、戦士二〇〇〇人分だとすれば全然足りない。食っても減らないイノシシ(セーフリームニル)があれば助かるんだけどなー」 「あれはヴァルハラの名物だったからな。今は手に入らないかもしれないが……。兄上たちには頑張ってもらうしかないか」 「? 『兄上たちには』って、何?」 「食料調達したり、資材集めしたりしてるのは兄上たちなんだろう? ジーク様とミュー様と一緒に出掛けたって言ってたぞ」  するとチェイニーは捌く手を止めてこちらを見た。そしてこんなことを言い出した。 「それ、嘘だよ。フレイン様は狩りに行ったんじゃない」 「えっ……?」 「彼らはどこかの塔を偵察に行ったんだ。そういう話をしてるの、聞こえたもん。敵がうじゃうじゃいて危険だから、目立たないようにできるだけ少人数の精鋭で行ったんだって。いずれ攻め入る予定だから、念入りに周辺を偵察してきたらしいよ」 「…………」 「あ、ごめん。ショックだったよな、フレイン様に嘘つかれて。気分悪いだろうから、この話はもうやめにし……」 「いや、やめなくていい。その話、もう少し詳しく聞かせてくれ」  アクセルは話の続きを促した。  もちろん、気分が悪くないわけがない。先程「嘘はつかない」と言ったばかりなのに、そんな大事なことをごまかされていたことが非常にショックだった。正直、怒りも沸いていた。  だけど、ここで怒ってしまっては何も話が進まない。できることなら兄に直接問い詰めたいけど、同じことを繰り返してはまた適当にごまかされて終わってしまう。それよか、チェイニーから詳しい話を聞き出した方がずっと有意義だろうと思った。  アクセルは覚悟を決めて、話に耳を傾けた。

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