584 / 2013
第584話
チェイニーは言った。
「これはあくまでオレが小耳に挟んだだけだから、話半分に聞いてよ? フレイン様たちはね、どうやら石碑の居場所を突き止めようとしているんだ」
「……石碑? 何の?」
「運命の巫女様の予言が記された石碑らしい。そこにはこの世の創造からラグナロクの予言、滅亡から再生まで全てが記されているんだって。もちろん、『オーディン様がフェンリルに飲み込まれて死ぬ』って運命も書かれている」
「そんなものがあるのか……」
予言がどうとか、巫女がどうとかいう話は聞いていたが、石碑があるというのは初耳だ。
アクセルは身を乗り出して、聞いた。
「それで、その石碑を探し出してどうするつもりなんだ?」
「そこまではハッキリしてないんだけど、石碑を破壊するとラグナロクを止められるらしいんだよ」
「えっ……? そうなのか?」
「うん。ほら、ラグナロクを始めたのってオーディン様じゃない? オーディン様は死の運命を避けたくて、自分以外の全てを滅ぼそうと思ったわけでさ。なら、その石碑を破壊しちゃえば予言も覆るってわけ」
「そうか……それでその石碑を見付け出そうと……」
要するに、その石碑を探して破壊してしまえば、この不毛な争いも終わるというわけだ。兄たちは今、その石碑を見つけようと努力しているわけだ。ようやく納得がいった。
――でも、それなら何故兄上は石碑のことを何も話してくれないんだ……?
探し物をする時は、大勢で手分けして探した方が早く見つかる。自分たちが生き残るためなのだから、できるだけ早く石碑を見つけて破壊すべきだ。何故そうしないのか。何故自分たちだけで石碑探しをしているのだろうか。
「……兄上は本当に水臭い。そういう大事なことなら、ちゃんと話して欲しいんだが」
「フレイン様の考えはわからないな。でもそれだけ重要な石碑なら、きっと普通の場所にはないんだと思う。上位ランカーでも躊躇するような、危険な場所にあるんじゃないのかな。簡単な場所なら、あっさり石碑を破壊できてるはずだもんね」
「それもそうか……。石碑探しも大変そうだな」
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