586 / 2013
第586話
「それで、その石碑って見つかりそうなのか?」
アクセルはあえて話題を変えた。チェイニーは首をかしげて、答えた。
「さすがにまだ見つかってないけど、上位ランカーは優秀だからね。近いうちに見つけるんじゃないかな。そしたら今拡張しているところに運び込んで、破壊工作をするんだと思う」
「ああ、なるほど。そのための拡張工事だったのか。それじゃあ、せめて俺は地下での作業を頑張らないとな」
「…………」
獣の肉を部位ごとに切り分け、煮込む前に一口サイズにしておく。ざくざくと包丁を入れていく瞬間が、料理の中で一番好きだった。肉や野菜を切り刻むのは、いい意味での憂さ晴らしになる。
チェイニーも隣で肉を切りながら、ポツリと尋ねてきた。
「……アクセルは、フレイン様と喧嘩しないの?」
「? そりゃあたまには口論することもあるさ。でも年齢が離れすぎてるから、あまり本格的な喧嘩にはならないんだよな。なったとしても俺が一方的に怒ってるだけだったり、兄上に論破されて平謝りする羽目になったり」
「はあ、なんかそれも相手にされてない感じで虚しいね」
「そんなことはないけどな。兄上がちゃんと俺のこと考えてくれてるのはわかってるし……」
「でもほら、アクセルが人質に行ってる間、毎日フレイン様に手紙書いてたじゃない? オレ、いつも届けてたからわかるけど、フレイン様はそれを受け取るだけで返事はほとんど書かなかった。書く暇が全くなかったわけじゃないのに、返事サボってたんだよ」
「……そうなのか? 兄上は神器選考会があったから、手紙を書く時間がなかったって言ってたが」
「いや、時間はいっぱいあったはずだよ。食事の後は寝るだけだし、自分の選考じゃない時間は待機してるだけでヒマだし」
「…………」
……また小さな嘘をつかれていたようだ。こういうの、地味に傷つく。
ともだちにシェアしよう!