587 / 2013

第587話

 チェイニーが更に言った。 「なんかさー、そういうの見てるとアクセルが可哀想でしょうがなくなるんだよなぁ。アクセルはこんなにフレイン様のこと想ってるのに、フレイン様はその一〇%も返してないような気がしてさ。なんか片想いみたいじゃん」 「片想いか……」  そんなことはない……と言いたかったが、一〇〇%違うと言い切れないところが辛い。  というか正直、「あの兄上が何で俺なんかを愛してくれるんだろう」という疑問は未だに強く残っていた。兄に比べて自分が劣っているのはどう見ても疑いようがないし、いくら強くなっても対等になりきれていないのは重々承知している。  多分それも、「自分に自信がない」のが原因なんだろうけど……。  アクセルは苦笑しながら言った。 「……いいんだ。例え片想いだとしても、俺は兄上が好きだから。手紙の返事がなくても、多少嘘つかれても、俺の気持ちは変わらないよ」 「え……変わらないの?」 「変わらないな。兄上が大雑把なのは昔からだし。そんなことで嫌いになるほど、浅い付き合いでもないし。もし兄上が全然違う女性を好きになって結婚してしまったとしても、俺はずっと兄上に片想いし続けると思う」 「……マジで?」 「ああ。俺は物心つく前から兄上のことが好きだったからな。今更、それ以外の人を好きにはなれないさ」 「…………」 「……というか、何でそんなこと聞くんだ? 俺たちの仲がそんなに心配なのか?」 「いや……そういうわけじゃないんだ。ちょっと聞いてみただけでさ……」  そう言って、チェイニーは深く俯いて小さく呟いた。 「……やっぱり、オレが入る余地はないみたいだなぁ」 「えっ……?」 「いや、こっちの話。気にしないでよ」  それっきり、作業に戻ってしまうチェイニー。  アクセルには、この同期が何を考えているのかよくわからなかった。何故そんなに自分たちの仲が気になるのかも、不思議でならなかった。

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