592 / 2014

第592話(フレイン視点)

 アクセルが地上に上がっている間、フレインも地下で食事をとっていた。  ジーク、ユーベル、ミューの三人も一緒だ。 「それで、暁の塔はいかがでしたか?」  ユーベルが赤ワインを味わいながら、尋ねてくる。  彼はワインにもそれなりのこだわりがあるらしく、「イノシシのシチューには赤ワインが合うんです」などと言って、地下に貯蔵している貴重なワインを開けていた。ランキング四位の強者だから許されるが、普通ならぶっ飛ばされているところだ。 「それが、聞いてた話とちょっと違ってさー。思ったより警備が厚くなかったんだよねー」  と、ミューが答える。  ミューもミューで貴重なハチミツをたっぷりパンに塗り、シチューと交互に味わっていた。 (せっかく食料を調達してきても、これじゃあっと言う間に食糧難になりそうだなぁ)  腹が減っては戦ができぬとは言うものの、平時と同じような食欲を発揮されても困る。自分がいうのも何だが、もう少し計画的に食べて欲しい。 「……ミューの感覚を全面的に信用するのは危険だが、思ったより警備が厚くなかったのは事実だな」  ジークが、大盛りにしたシチューを食べながら言う。  彼はミューやユーベルに比べればまだ常識的だが、食事に関してはあまり遠慮しないようにしているようだ。 「身体の黒い巨人が塔の入口に何体かいたけど、裏道はガラ空きだった。地下通路を通ればあっさりと内部に進入できそうだぜ」 「そうですか。ならばさっさと攻略してしまいたいですね。石碑の候補地は他にもあるのですから」 「まあ、しらみつぶしに探していけばいつかは見つかるはずだけど……そっちはどうだったの?」  そうユーベルに聞いたら、彼は小さく首をかしげた。 「どう、とは?」 「勝手に出て行こうとしたアクセルを止めてたでしょ。止めるのはいいけど、何を話していたの?」

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