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第603話

「俺、兄上が石碑を探していることも、それを破壊しようとしていることも知っている。地下施設の拡張工事は、その石碑を運び込むためなんだろう?」  そう言ったら、兄は目を見開いた。その驚いた顔を見たら、少し胸がすっとした。 「……あなたは隠しているつもりかもしれないが、俺だってある程度のことはわかっている。あなたが直接話してくれなくても、情報はちゃんと入ってくるんだ。……例えば、俺が人質に行っている間、兄上は返事を書けなかったんじゃなくて書かなかっただけだとか……そういうことも全部」 「……!」 「でも……そういうことは、適当にごまかすんじゃなくて、最初から正直に言って欲しい……。兄上はそんなにマメな人じゃないから、面倒になってサボってしまうことだってある……そんなこと、重々承知している……。だから俺だって、手紙の返事が来なかったくらいで怒ったりしないよ……」 「…………」 「それよりも、嘘つかれる方が辛いんだ……。その時はいいかもしれないが、後に本当のことを知った時に『俺は全然信用されていなかったのか』って惨めな気持ちになる……。それくらいだったら、『私が今やっていることは大事なことだけど、事情があってお前には教えられない』って言ってくれた方が潔い……」  最初の話とかなりズレてきたが、溜まりに溜まった不満を止めることはできなかった。  アクセルは鼻をすすり上げて、兄を見た。一緒に涙も流れてきたが、これも止めることができなかった。 「俺が馬鹿正直で騙されやすいのはわかってる……。そんなヤツに、肝心な情報を渡しておくのは誰だって不安だ……。兄上が黙っているのも理解できる……。だからもう、教えてくれなんて言わない……。だけど、嘘だけはつかないでくれ…。俺を騙すような真似はしないでくれ……お願いだから……」 「アクセル……」 「これ以上嘘つかれたら、兄上のことを信じられなくなりそうで……」

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