605 / 2000

第605話

 ――責めたかったわけじゃないんだよ、兄上……。  ただ、わかって欲しかった。自分がこんな気持ちで、こんな風に思っていることを理解して欲しかった。非難したり傷つけたり、ましてや泣かせたりしたかったわけじゃない……。 「もういいよ……。俺はただ、気持ちを理解して欲しかっただけだ……。変にごまかすのをやめてくれればそれでいいから……だから……」 「アクセル……」 「……俺のこと、見捨てないでくれ……」  絞り出すように、耳元で訴える。  自分でもめんどくさい弟だなと思う。あれは嫌だ、これは嫌だ、これはこうしてくれ……と注文ばかりつけて、そのくせ自分は何の役にも立っていない。いつも面倒をかけているくせに、この上更に面倒なことを言ったら、今度こそ兄に愛想を尽かされそうだ。自分だったら「もう勝手にしろ」とか言って突き放してしまいそうである。  もっとも、こうやって時折縋りつくような言動をとってしまうことも、兄にとっては鬱陶しいことかもしれないが……。 「何を言ってるんだい? お前を見捨てるなんてあり得ないよ。そんなこと考えたこともない」  そう言って、兄が顔を上げた。優しく微笑み、目尻に口付けてくる。 「……むしろ、愛想を尽かされるのは私の方かもな。お前が嫌がることばかりしている。お前は可愛いから、ついいじめたくなっちゃって……我ながら子供っぽくていけないね」 「っ……あっ!」  兄に前髪を掻き上げられた途端、中に入っていたものがぐん、と質量を増した。  何故このタイミングで大きくなるのか謎だったが、これによって下腹部の圧迫感も一緒に増したのは事実だ。 「兄上、ちょっ……くるし……」 「あ、ごめんね。お前をいじめるところを想像したら大きくなっちゃった」 「なっ……! 兄上、実は結構なドSだろ……!」 「おや、今頃気付いたのかい? 普段はともかく、こういう時はついS方向に傾いちゃうんだよね」 「そんな……あっ、あっ!」

ともだちにシェアしよう!