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第605話
――責めたかったわけじゃないんだよ、兄上……。
ただ、わかって欲しかった。自分がこんな気持ちで、こんな風に思っていることを理解して欲しかった。非難したり傷つけたり、ましてや泣かせたりしたかったわけじゃない……。
「もういいよ……。俺はただ、気持ちを理解して欲しかっただけだ……。変にごまかすのをやめてくれればそれでいいから……だから……」
「アクセル……」
「……俺のこと、見捨てないでくれ……」
絞り出すように、耳元で訴える。
自分でもめんどくさい弟だなと思う。あれは嫌だ、これは嫌だ、これはこうしてくれ……と注文ばかりつけて、そのくせ自分は何の役にも立っていない。いつも面倒をかけているくせに、この上更に面倒なことを言ったら、今度こそ兄に愛想を尽かされそうだ。自分だったら「もう勝手にしろ」とか言って突き放してしまいそうである。
もっとも、こうやって時折縋りつくような言動をとってしまうことも、兄にとっては鬱陶しいことかもしれないが……。
「何を言ってるんだい? お前を見捨てるなんてあり得ないよ。そんなこと考えたこともない」
そう言って、兄が顔を上げた。優しく微笑み、目尻に口付けてくる。
「……むしろ、愛想を尽かされるのは私の方かもな。お前が嫌がることばかりしている。お前は可愛いから、ついいじめたくなっちゃって……我ながら子供っぽくていけないね」
「っ……あっ!」
兄に前髪を掻き上げられた途端、中に入っていたものがぐん、と質量を増した。
何故このタイミングで大きくなるのか謎だったが、これによって下腹部の圧迫感も一緒に増したのは事実だ。
「兄上、ちょっ……くるし……」
「あ、ごめんね。お前をいじめるところを想像したら大きくなっちゃった」
「なっ……! 兄上、実は結構なドSだろ……!」
「おや、今頃気付いたのかい? 普段はともかく、こういう時はついS方向に傾いちゃうんだよね」
「そんな……あっ、あっ!」
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