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第612話
その後も何度も挑まれ、とうとうアクセルは足腰が立たなくなってしまった。
「お前、大丈夫?」
「……休めば、何とか……」
ぐったりと兄に身体を預ける。横向きに運ばれている最中もほとんど全身に力が入らず、時折襲ってくる腰痛と戦う羽目になった。
――今晩だけで何回やったんだろう……。
足腰を潰されるまで抱かれることはそう多くない。翌日の行動が制限されるのは困るから、兄も――無茶苦茶にやっているように見えて――いつも手加減してくれていた。
だけど今回は、明日ちゃんと動けるかも怪しい。いくら近くに泉があるとはいえ、ラグナロクの最中にこんな体たらくで、ちょっとした後ろめたささえ覚えてしまう。
長い溜息をついたら、兄が小さく苦笑した。
「ごめんね、気付いたら止まらなくなっちゃって」
「……そんなによかったのか?」
「うん、最高だった。いろいろあった後で、腹を割って交われたのも嬉しかった。だから余計に歯止めが効かなくなっちゃったのかも」
「……そうか。まあ、兄上が満足したならいい」
俺もよかったし……と呟いたら、兄は幸せそうに微笑んでくれた。
兄にピピの側まで運んでもらい、ふわふわの腹部に寄り掛かる。
ピピは一瞬パッと目覚めたが、すぐに「なんだ、あんた達か」とでも言うように再び地面に寝そべった。そして「すぴー……」と寝息を立てた。
「あと数時間で夜が明けちゃうかな。まあ明日はお互い非番だから、よかったね」
「……ああ、そうだな……」
ふかふかの毛並みに寄り掛かっていたら、猛烈な眠気が襲ってきた。
兄も隣に寄り添い、一緒に掛布団をかけつつ、こちらを抱き締めてくれた。何だかとても安心した。
「兄上……」
「うん、おやすみアクセル。明日は一緒に拡張工事やろうね……」
小さく頷き、アクセルは眠りについた。
兄もピピも側にいてくれる。そのことがとても幸せだった。
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