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第614話
アクセルは出陣していないので、外の戦いがどれだけ激しいか実感できていない。
ただ、ここにいる戦士の数が日に日に減っているのはハッキリわかった。一ヶ月前は二〇〇〇人以上いたのに、今では半分程度になってしまった。出陣した戦士が二度と帰ってこないということもままあった。
兄を筆頭とした上位ランカーは、当たり前のように生き延びているけれど、次も必ず生きて帰ってくるという保証はない。
だから、一刻も早くラグナロクを終わらせたいと思う。石碑を破壊して、予言を覆して、世界を再生して平和なヴァルハラを取り戻したい。
平和になったら、まずは兄と生活するための新居を構えて……などと考えていると、突然外が騒がしくなった。梯子をかけた場所から、地上の騒音が聞こえてくるくらいだった。
「な、何だ!?」
「敵襲かな? しかし今更敵襲っていうのも妙だねぇ」
ここには敵に襲われるようなものもないはずだし、などと言っている兄。アクセルと違い、兄は突然の敵襲でも慌ててはいないようだった。こういうところは頼もしいなと思う。
兄は梯子に足をかけ、素早く言った。
「まずは外の様子を見て来ないとね。どうなっているか、確認してくるよ」
「だったら俺も行く。ピピがどうなったかも心配だ」
「そうかい? じゃあ一緒に行こうか。くれぐれも、無茶はしないようにね」
「兄上もな」
そう言って、アクセルも梯子に足をかける。そして二人で一緒に登って行った。
地上に出る穴からそっと目だけを出した途端、ズウン……と地響きが聞こえてきた。
ハッとして周囲を見回したら、遠くの森から白い波のようなものが押し寄せてくるのが見えた。何かと思ったら、それは大群になった狼だった。一〇〇〇頭はいそうな数である。
大群の背後には、山よりも大きな神獣の姿も見えていた。
「何だあれは……!?」
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