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第617話

「何だ、ここは……?」 「何だろう、私も来たことがない。橋の向こうにお城っぽいのが見えてるけど、いかにも怪しい場所だよね」  割れた大地の向こう側に、うっすらと巨大な城が見えている。天を突きそうなほどに高い塔が中央に聳え立ち、その周りを取り囲むようにいくつかの塔が建っている。城にしては随分と武骨で刺々しい印象だ。  あれは一体何の城なのだろう。いかにも重要なものが見つかりそうなのだが……。 「お前さんたち、こんなところで何してるんだ?」  覚えのある声が聞こえて、アクセルとフレインはそちらを振り返った。  得意の槍を持った上位ランカーが、驚いたように目を丸くしていた。 「おや、ジークじゃないか。何でこんなところにいるんだい?」 「他の主だった場所の攻略が終わったんで、ヴァルハラに帰らずに最後の場所の攻略をしようと思ってな。で、お前さんたちは?」 「ヴァルハラがフェンリルの群れに襲われてね。それで急いで逃げてきたんだ。もうヴァルハラはおしまいかもしれないな……」 「そんな……兄上、そんなこと言わないでくれ」  アクセルは思わず口を挟んだ。 「例えヴァルハラが滅茶苦茶になっても、生きてさえいればまた再建できるはずだ。何年かかっても必ず元のヴァルハラにする。だから早くラグナロクを終わらせたいんだ。兄上だってそうじゃないのか?」 「ああ、うん……そうだね。お前の言う通りだ。私も早く元のヴァルハラに戻して、お前と死合いたいよ」 「ああ、まだ兄上と公式戦で思いっきり死合えてないからな」  ヴァルハラに来たばかりの時に一度戦ったことがあるが、あの時は滅多斬りされて終わってしまった。だから実力が拮抗してきた今こそ、改めて正式に死合いたかった。  気持ちを込めて兄を見つめたら、兄もにこりと微笑み返してくれた。 「あー、ラブラブなところ悪いんだが、あまりのんびりしている時間はないぞ」  ジークが槍を肩に担ぎながら、橋の向こうの城を眺めた。 「フェンリルがヴァルハラに行ってるなら、今がチャンスかもしれない」

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