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第618話
「チャンス……とは?」
「あの城、フェンリルが主だって言われてんだ」
「えっ……?」
あの城、とジークが示した方に目をやる。天を突きそうなほど高い塔と、周りを取り囲んでいるその他の塔。あれがフェンリルの城なのか。いかにも重要なものがありそうだ。
「じゃあ攻略するなら今しかないってことですか?」
「そういうことになりますね」
と、今度はユーベルがやってきた。彼はいつも通り優雅な格好で、目に特徴的な赤いシャドウを入れている。
「城の近くまで行ってみましたが、まず入るのに一苦労しそうですね。入口らしいものがどこにもないので。その代わり、監視塔には簡単に入れましたよ。今ミューが中を調べていますが、変な気配はなさそうです」
「監視塔……」
「橋の向こう側に見えているでしょう。小さな灯台みたいな建物ですよ」
確かに、橋を渡った先に監視塔とかいう建物があった。小さな灯台と言われている通り、さほどの大きさはない。巨大な城にばかり気を取られていると、見落としてしまいそうだ。
兄が腰に手を当てて言う。
「ここで立ち往生しててもしょうがないし、とりあえず監視塔まで行ってみる? ミューを一人にしておくと大事なものまで破壊しかねない」
「それがいい。さっさと橋を渡っちまおう」
槍を担ぎ上げ、スタスタと橋を渡り始めるジーク。ユーベルも優雅な足取りでジークに続いた。不安定で時折ギシギシ揺れているのに、怖がる様子は微塵もない。さすがに上位ランカーは、こういうところでも肝が据わっている。
「さて、じゃあ私たちも渡っちゃおうか」
そう言って兄が数歩橋を渡った。
アクセルも渡ろうとしたが、一歩踏み出しかけたところで足を引っ込め、その場に立ち尽くす。
「どうしたんだい? お前もおいでよ」
「あ、いや……俺はいいんだが、ピピはこの橋渡れるかな……」
「ぴ?」
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