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第620話

「お前、以前あげた御守り、ちゃんと持ってる?」 「え? ああ、これか……」  服の下に隠れている細めの鎖を引っ張り出す。その先には、雫型にカットされた青い宝石がついていた。以前、兄に危ないところを助けてもらった時、「お前は危なっかしいから」ともらった御守りだ。  何のご利益があるか知らないが、兄がくれたものなので、いつも大事に身に付けている。 「それ、ちゃんと身に付けておきなさい。……何か嫌な予感がするんだ。ここで別れたら、またしばらく会えないような気がして」 「そんな物騒なこと言わないでくれ。話し合いが終わったら戻ってきてくれるんだろ? 少しの間だし、大丈夫だよ」 「……だといいけどね。とにかくお前、本当に気をつけなさいよ? 何かあっても、お兄ちゃんはすぐに駆け付けてあげられないんだからね」 「わかってるよ」  まったく、本当に兄は心配性だ。兄ほどたくましくはないにせよ、少しくらい一人で放置されても何とかなる。今はピピも一緒だし。 「じゃあ行ってくるね。怪物が出たら、下手に戦おうとせずすぐに逃げるんだよ」 「だからわかってるって。兄上も気をつけてくれ」  未だに心配そうだったが、兄はようやく不安定な橋を渡って行った。  アクセルは兄の姿が見えなくなるまで、橋の近くで兄を見送った。  ――というか、兄上こそ御守り持ってなかったけど大丈夫なのか?  監視塔に行くだけだから大丈夫だと思うが……気休めの御守りくらい、自分もあげればよかったかもしれない。  今更遅いけど……と思っていると、ピピが身体をすり寄せてきた。 「ぴー……」 「いや、まあ大丈夫だろ。俺たちは安全そうな場所を探して、そこで待機してようか」  こくこくと頷いてくるピピ。  アクセルは橋に背を向け、周囲を見回した。  周りはひたすら薄暗い荒野が広がっているだけで、安全そうな洞穴はない。遠くの方に山は見えるが、あんな遠くまで行ってしまったら兄が戻ってきた時に困るだろうし、逆に変な神獣と遭遇してしまいそうだ。  さて、どうしたものか……。

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