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第628話

 身体の冷えが一通りとれたところで、アクセルはひとつ深呼吸した。今自分がやるべきことを整理しようと思ったのだ。 「兄上を捜したいところだが……闇雲に歩き回っても行き違いになりそうだよな」 「ぴ……」 「兄上たちはフェンリルの城を攻略しようとしていた。でもフェンリルが帰ってきてしまった以上、作戦変更せざるを得なかったはずだ。隙を見て城に突入するつもりなのか、それとも城の攻略そのものを見合わせたのか……」  一人でブツブツ言っていたら、ピピが怪訝な顔で首をかしげてきた。「そんなの考えてもわからなくない?」と言ってるみたいだった。 「……それもそうだな。こんなこと、一人で考えても結論は出ないか。じゃあとりあえず、危険のなさそうな場所で一晩過ごしてみようか。兄上が戻ってくるかもしれないし、監視塔も使えるようになるかもしれない。その後で、自分にできることを考えよう」 「ぴー」  うんうん、と頷いてくるピピ。  アクセルはピピと一緒に監視塔から離れ、安全そうな場所を探した。  ――と言っても、この辺本当に何もないんだよな……。  周りはただっぴろい荒野で、あるのは監視塔とフェンリルの城くらいである。こんな状況で安全そうな場所を探すのは、かなり苦労しそうだった。  せめてヴァルハラと同じように地下空間でもあればいいのだが……。 「ちょ、ちょっと休憩……」  アクセルはやや大きめの石に寄り掛かった。ヴァルハラから逃げて来て、ほぼ休憩なしに動き回っていたせいか、さすがにちょっと疲れてきた。 「ピピは疲れてないか? そろそろご飯も食べたいだろ。休める場所を見つけたら食料探してくるから、もう少し我慢してな」 「ぴー……」 「ああ、俺は大丈夫だよ。ちょっと休めば回復する。そしたらまた周辺の探索を再開して……」  その時、突然背後の石がズズッとズレた。そこに寄り掛かっていたアクセルはバランスを崩し、後ろ向きに転倒しそうになった。

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