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第629話

「おっと……」  すんでのところで踏ん張り、後ろを振り返る。見れば、ズレた石の下に何かの穴が見えていた。 「これは……?」  何だろうと思い、再度ぐぐ……っと石をズラしてみる。結構な力が必要だったが、どうにか石を除けることに成功した。 「階段だ……!」  石の下から出現したのは、地下に続く階段だった。ヴァルハラの地下施設と同様、結構な深さがあるように見える。  ただし、横幅は大人一人が通れるくらいの広さしかなく、ピピは入れそうになかった。 「……兄上たちはここに逃げ込んだんだろうか。これ、一体どこに繋がってるんだろう」 「ぴー……」 「ピピ、ちょっとだけ待っててもらえるか? 階段下まで行ってくる。様子を窺ったらまた戻るよ」 「ぴ……」 「大丈夫だ、本当に行って見てくるだけだから。一人で無茶するほど子供じゃないさ」  一人で突っ走って失敗するのは何度も経験してきた。いい加減学習してもいいはずだ。  アクセルはピピを撫でながら、微笑みかけた。 「じゃあ、行ってくるからな」 「アクセル、しんぱい……」 「わかった、それなら時間を決めよう。三十分以内には必ず戻ってくるから。な?」 「ぴ……」  ピピは複雑な顔をしていたが、スン……と鼻を鳴らして引き下がった。  アクセルは早速階段を下り、地下へと歩を進めた。  階段の壁には一定ごとに小さな火が灯されており、それが足元をほんのりと照らしてくれる。見たところごく普通の灯りで、魔法などの半永久的なものではなかった。  ――てことは、誰かが最近点けたってことだよな……。  いつ何と遭遇してもいいように気を引き締め、片手は小太刀に添えておく。  幸運なことに、階段を下りきるまでは何かに遭遇することはなかった。  周囲の様子を探りつつ、アクセルは地下の探索を続けた。ピピには三十分以内には必ず戻ると約束してある。残り時間はせいぜい二十分くらいだ。それ以上は無理して探索しない。  でないと、またドツボにハマって帰れなくなりそうで……。

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