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第637話
聞きたい。本当のことを確かめたい。「ちゃんと血の繋がった兄弟だよ」という確信が欲しい。
だけど、だけど……もし実の兄弟じゃなかったら……。
「お前、また変なことで悩んでない?」
「変なことって……」
「お前は細かいことで悩みすぎなんだよ。私みたいに大抵のことはどうでもいいスタンスで生きて行った方が、ストレスも少なくて済むと思うんだけどね」
「……じゃあ兄上は一度も気にしたことがないのか? 俺たちが本当の兄弟なのか……本当に血が繋がっているのかどうか……」
そう言葉を投げつけたら、兄は肩越しに振り返ってこう言った。
「そんなこと気にしてどうするの?」
「そ、そんなこと……!? あのなぁ、これってかなり重要なことじゃ」
「私とお前の血が繋がっていなかったとして、私たちの関係が何か変わるのかい? これからもずっと家族だし、これからもずっと兄弟でしょ」
ハッとしているアクセルに、兄は更に言った。
「私はね、初めてお前を見た時に決めたんだ。血が繋がっていようがいまいが、この子は私の弟だ、何があってもこの子を守ろう……ってね」
「……!」
「お前だって私のこと、お兄ちゃんだと思ってるだろう? だったらそれでいいじゃない」
「…………」
そう言われた途端、抱えていた悩みがさあっ……と晴れていった。喉元に刺さった小骨がポロッととれたような心地がした。
――そうか……そうだよな……。
確かに兄の言う通りかもしれない。
万が一血の繋がりがなかったとして、一体それがなんだろう。今までアクセルはこの人を、自分の兄だと思って慕ってきた。その気持ちはこれからも変わらないし、ラグナロクが終わったらひとつ屋根の下に……という思いも変わらない。
だったらそれでいいではないか。血の繋がりがあるかないかなんて、兄曰く「どうでもいいこと」だ。
「……それもそうだな。あなたは俺の兄上だ。変なこと言って悪かった」
そう言ったら、兄はにっこり笑って「いい子いい子」と頭を撫でてくれた。
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