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第651話

 そう言い切ったら、兄はパチパチと瞬きしてこちらを見た。 「確かにお前にはよくご飯ひっくり返されたけど……お前、そんなことよく覚えてるね?」 「いや、その……これも夢で見たというか……」 「夢で?」 「う、うん……目覚める直前まで、昔の夢を……」  言っていて、自分で恥ずかしくなってきた。アクセルは頭を垂れて兄に謝罪した。 「今更だけど、あの時は本当に申し訳なかった。わがまま言い放題で、兄上を困らせてばかりで……」 「なんだ、そんなの。子供のやったことだし、気にしてないよ」 「だけど、兄上だって一人で辛かったはずだろ……? なのに兄上の気持ちも考えずに、俺ばかり好き放題に振る舞って……」 「んー……」  兄は少し首をかしげ、悪戯っぽい笑みを浮かべた。  何かと思っていたら唐突にぎゅーっと抱き締められ、そのままテーブルの上に押し倒された。 「え、あの……兄上……?」  上から顔を覗き込まれ、愛しそうに輪郭を撫でられる。 「お前は本当に可愛いね……。子供の頃は手がかかったけど、こんないい子に育って……それだけでも大事に育ててきた甲斐があったよ」 「兄上……あっ」  スス……と服の中に手を入れられ、アクセルはぴくりと肩を震わせた。うっすらと嫌な予感がして、慌てて兄の手を掴む。 「ちょ、兄上……! さすがに今ここでやるのはマズいって!」  ピピも外で待ってるんだぞ! と言ったが、兄は上から退いてくれなかった。 「ふふ、こうやって反応が返ってくるのも最高……。もっと可愛がってあげたくなっちゃう」 「いや、だから兄上……! 本当にこんなことしてる場合じゃ……んんッ」  せっかくの反論も、唇を塞がれて何も言えなくなってしまう。  下唇に噛みつかれ、怯んだ隙に舌を差し込まれ、逃げ回る舌を強引に絡め取られて唾液を吸い上げられる。

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