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第653話*
「兄上……?」
やたらと感慨深げに言うので、アクセルは怪訝に思って兄を見上げた。
兄は優しく微笑みながら、こちらの顔を包み込んできた。
「お前が生まれるまで、私はずっと一人だった。『おはよう』の挨拶を返してくれる人もいなかったし、一緒にご飯を食べてくれる人もいなかった。ほとんど誰とも会話せずに終わってしまう日も少なくなかった……」
「……!」
「でもね、お前が来てからはそんな生活が一変したんだ。お前はすごく手のかかる子だったから、朝から晩まで目が離せないし……私の姿が見えなくなるとすぐ泣き出したりして、『たまには一人になりたい』と思うほどだったよ」
「う……すまな、いっ」
ぐっ……と最奥を突き上げられ、謝罪の言葉が途中で詰まる。快感に掻き消される理性をどうにか掻き集め、兄の話を聞こうと一生懸命耳を傾けた。
兄は続けた。
「もちろん、イラッとすることもあったけどね。でも、それでもやっぱり楽しかった。どんな反応が返ってきても、反応してくれるだけで嬉しかった」
「反応、だけで……?」
「だってねぇ……怒るにしろ泣くにしろ笑うにしろ、反応が返ってくるってことは『誰かがそこにいる』ってことだからね。一人でいたら、どんなにすごいことをしたところで、なーんの反応も返ってこないんだよ? そんな虚しいことはないでしょう」
「……!」
「……でも、お前がいたおかげで世界が変わった。父上や母上が帰ってきてくれなくても、なんてことないと思えるようになった。手はかかったけど、私はそれが嬉しかった」
「兄上……」
「私のアクセル……可愛い弟、愛してるよ。例え世界が滅んでも、ずっと一緒だからね……」
「……あっ!」
再び最奥をゴリッと抉られ、一瞬視界が白く霞んだ。細かい痙攣がぶり返し、太ももがぶるぶる震えて止まらなくなる。
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