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第660話

 自分の分の食事を平らげ、台所で食器を洗い、片付けをしていたらあっと言う間に二〇分経った。それでもやはり兄とピピは戻って来ず、外の様子も変わらなかった。  ――仕方ない……。  アクセルは寝室へ行き、本棚を動かして扉を開けた。開けた瞬間、ヒュッ……と風が吹きつけてきて、すぐに吸い込むように風が流れ出した。  扉の向こうには、薄暗い荒野が広がっている。それがどんな世界かわからないが、進んでみなければわからないこともある。  それに、もしかしたら兄はこの先に進んで待っているのかもしれないし……。  覚悟を決めて、アクセルは扉の向こうに進んだ。  そこは見渡す限りの荒野が広がっていて、目立った建物は何もない。植物も最低限しか生えていないような場所だった。何をあてに進んでいいか見当がつかない。  こんなところを一人で進むのは気が重いな……と思いつつ、背後を振り返る。それならせめて扉を目印に探索しようと考えたのだが、すぐ後ろにあるはずの扉はいつの間にか消えてしまっていた。  ――げっ、扉がない……!  この透ノ国では、一度入ってきた扉は消えてしまう仕組みになっているのか? 世界の行き来は常に一方通行になのか? なんて不便でやりにくい世界なんだろう……。 「はあ……」  ますます不安になってきたが、来てしまったものは仕方がない。今更後戻りはできない。  大丈夫、きっとまた出口が見つかるはずだ……と自分に言い聞かせ、アクセルは周辺を探索することにした。念のため、もともと扉があったであろう場所に大きめの石と枝を置き、目印にする。ここを起点に探索しよう。  まず、目印から半径数キロ圏内を歩き回る。これといった大きな発見はなかったが、ひとつだけ見覚えのある岩を発見した。監視塔付近で見つけた地下への入口に似ている。 「これってまた……」  アクセルは当たり前のように岩を押し、岩一つ分ズラしてみせた。  思った通り、岩の下には階段があった。  ――やっぱりな……。

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