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第672話

「……あんた、思ったほど馬鹿じゃないのね。しょっちゅう罠にかかってるから、おバカなのかと思ってたわ」 「その言い方な……。いちいち癇に障るし、第一失礼なんだが」 「あんたの怒りを買ったところで、痛くも痒くもないわ。気に入らないなら適当に切り上げて帰ればいいでしょ」 「……。わかったよ……」  反発していては話が進まないので、仕方なく我慢する。しかし、どうして彼女はこういう言い方しかできないのだろう。気が短い人だったら話をする前に帰ってしまいそうだ。  ――この人、友達いなさそうだな……。  それで透ノ国みたいな人里離れた場所に、一人で住んでいるのかも……などと妄想する。  少し息を吐き、アクセルは改めて尋ねた。 「それで、どうなんだ? 何故あなたは俺たちのことを知ってるんだ?」 「あんたに教えてやる義理はないわね」 「んなっ……! ここまで来てそういうこと言うか?」 「あんたの疑問なんて私には関係ないもの。悔しかったら自分で突き止めてみれば?」 「っ……」 「あ、この石碑を破壊してくれたら教えてあげてもいいわよ。私の情報は貴重なんだから、それくらいのことはしてもらわないと」 「だから……!」  いい加減キレそうになり、彼女に詰め寄ろうとした時だった。 「アクセル!」  扉のところから兄の声が聞こえて、アクセルはそちらに目をやった。兄が血相を変えて走り寄ってくる。 「兄上……!?」 「アクセル、離れなさい! 母上に近付いちゃいけない!」 「えっ!?」  目を見開いていると、兄が庇うように自分の前に立った。そして予言の巫女と対峙した。 「うちの弟を誑かさないでくれますか。今更出て来て、何のつもりです?」 「あら、フレイン。あなたは相変わらず過保護よね。私とは正反対」  二人のやり取りを聞いて完全に理解した。  ――この人が、俺たちの母上……!?

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