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第673話
兄の後ろから、予言の巫女を凝視する。
にわかには信じられない……が、そう考えればいろいろなことに納得がいく。母と同じ顔をしているのも、自分たちの育った環境を知っているのも、わざわざ自分の前に現れたのも全部、彼女が本当の母親だったからだ。
ただ……。
――こんなのが俺たちの母親だなんて……。
密かに拳を固める。
自分の息子を置いて出て行くくらいだから、絶対ロクな女性じゃないだろうとは思っていた。期待はしていなかったし、これといった思い入れもなかった。
だけど……だけど、それでも失望を禁じ得ない。
どんな事情があるにせよ、この女は兄を捨てたのだ。兄に必要以上の苦労を負わせ、その苦労を知っておきながら、今の今までずっと放置していたのだ。単に性格が悪いだけならまだ我慢もできようが、その点だけはどうしても許せない。
というか、息子を捨てたなら今更出てこないで欲しかった。「私とあんたはもう赤の他人」という姿勢を貫き通して欲しかった。そうすれば今後一切関わることなく、母のことを考える機会もなかったと思う。それが下手に出てこられてしまった分、かえって嫌悪感が拭えなくなった。
予言の巫女だか何だか知らないが、本当に今更何のつもりなのかと思う。
「フレインまで出てきたなら話は早いわ」
と、巫女は開き直ったように石碑を指差した。
「あんた達、二人で協力してこの石碑を破壊しなさい。それで全ては終わるわ。兄弟仲良く破壊するなら怖くないでしょ」
「はっ……!?」
この期に及んで、まだそんなことを言ってくる。何が何でも石碑を破壊して欲しいのか、二言目には「破壊しろ」しか言わない。
いい加減にしろよ、と睨んでいると、巫女は軽く鼻を鳴らした。
「嘘じゃないわ。この石碑には『石碑を破壊して全て元通り』って書いてあるもの。その通りのことをするだけでしょ」
「……母上、それは正確な情報ではありません」
兄が低い声で続けた。
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