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第681話(フレイン視点)

「おいフレイン、いい加減起きろよ」  ジークの声が上から降ってきて、フレインは低い呻き声を上げた。うつ伏せに枕を抱え、顔を埋めて拗ねる。 「んー……あと五分……」 「それ、さっきも聞いたな。お前さん、今日朝から死合い入ってるだろ。行かないと不戦敗になるぞ」 「別にいいや……。なんか身体ダルいし……」 「そりゃあ昨日あれだけやりまくればな。付き合うこっちも大変だったぜ」 「…………」 「てか、マジでいい加減起きてくれ。俺も狩りの指導があるんだ。一緒に出ないと戸締りできないだろ」 「うん……」  仕方なく、フレインはもぞもぞとベッドから這い上がった。  腰がズキズキ痛んだが、「昨夜やりまくって腰痛がひどいんです」なんて格好がつかないので、何事もないフリをしてベッドを下りた。死合いになったら、速攻で狂戦士モードに入ってしまおう。それなら痛みも感じないし。 「ちょっとシャワー借りるよ」 「おう。なるべく手短にな」  ジークの家の浴室に入り、勝手知ったる手つきでササッとお湯の設定をし、シャワーコックを捻る。頭から湯を浴びながら目の前の鏡を見たら、全身に欝血の痕が散りまくっている自分と目が合った。  ――うわぁ……すごいことになってる……。  自分でもドン引きするくらい、痣だらけだった。肌が白いせいか、余計に痕が目立って見える。気を遣ってくれたのか、ジークは服に隠れる場所にしか痕をつけていないようだけど、それにしてもひどい。そんなにやっちゃったのかなぁ……などと、おぼろげな記憶を掻き集める。  ――でも、誰と何回やっても満たされないんだよね……。  ラグナロクが終わり、ヴァルハラも平和になった。生き残った戦士(エインヘリヤル)は全員ヴァルハラに戻り、今まで通りの生活ができるようになった。  日課の死合いもあるし、狩りにも駆り出されるし、時々変な当番が回ってくることもあって、やるべき仕事はそれなりに多い。夜は宴に参加することもできるし、気に入った男とベッドインすることもあった。昨夜もジークにおねだりして、気絶するほどの快楽を与えてもらったのだ。  ……でも、何をしても満たされた感じがしない。

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