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第684話(フレイン視点)

 ピピは人が乗れるほど大きなうさぎなので、ピピ専用小屋もそこらの馬小屋より大きく作ってある。好きに駆け回れるよう庭自体も牧場並みに広くしたのだが、何故かピピはあまり庭で遊んでくれなかった。決して病気などではないのだが、どうも元気が湧いてこないらしく、いつも寝床でゴロゴロしている。そのくせ餌は普通に食べるため、飼い始めた初期の頃より若干太ってきた。  もう少し運動させた方がいいかなぁ……などと思いつつ、フレインは適当に野菜を切ってサラダを作り、それをピピの前に持って行った。 「ほらピピちゃん、ご飯だよ」 「ぴ……」  ピピは皿に盛られた野菜をじっと見つめ、おとなしくムシャムシャ食べ始めた。ただの生野菜だから味気ないのか、反応が薄い。やはり、ちゃんと調理した野菜スープ等の方が好きなのかもしれない。  とはいえ、ピピが満足する量の野菜スープを作るには前日から大鍋で煮込まないといけないから、なかなか頻繁に作れるものではないのだが……。 「ぴー」 「うん? どうしたの、ピピちゃん?」 「ミルク、ほしい」 「ああ、ミルクか。今とってくるからちょっと待っててね」  フレインは家に戻り、厨房下の戸棚を開けて中を調べた。ミルクやチーズ等の乳製品はここに保管してある。燻製用の木片も一緒にまとめてあるせいか、燻製の香ばしい匂いがした。 「えっと……ミルク、ミルク……」  戸棚の中を除きながら、ミルク瓶を探す。先日市場で買ったけど、どこに保管したっけ。自分で飲んだ覚えはないから、絶対あるはずなのだが……。 「……あ、あった」  戸棚の一番奥に、隠れるようにミルク瓶があった。燻製用の木片が邪魔だったので、それを適当にどけて手を伸ばす。 「……!」  とある木片がガタンと倒れた。普通の燻製チップではなく、何かの木彫りのようだった。 「何で木彫りがこんなところに……」  ミルク瓶と一緒に木彫りを引っ張り出す。木彫りなんて買った覚えないのに、燻製チップの中に紛れ込んでいるとか、意味がわからなかった。  一体何の木彫りなんだ……と思いつつ、戸棚から顔を出して明るいところで眺める。 「えっ……?」

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