688 / 2013

第688話(フレイン視点)

「どうせ暇だし、別の世界にも遊びに行ってみたかったんだー。でもどこに行くべきか決めかねてたんだよね。ちょうどいいからついて行ってあげる」 「そうか、ありがとう。動機はともかく、きみがいれば万が一戦闘になっても安心だね」  遊び気分なのは複雑だが、この先は何があるかわからない。戦力は多い方がいいだろう。  フレインは早速世界樹(ユグドラシル)を通り、バルドルが住んでいる世界に向かった。  彼はかつてアースガルズにある屋敷で一人暮らしをしていたが、今は細かい誓約がなくなったので自由にのびのび暮らしていると聞く。屋敷にいてくれるといいが……いなかった場合は若干面倒だ。  ――というか、アポなし訪問して追い返されたりしないかな……。  話がわかるとはいえ、バルドルはアースガルスの光の神である。いちエインヘリヤルごときが気軽に会える相手ではないし、ましてや予告なしに突撃訪問するのは非常に失礼だ。下手したら門前払いされる可能性もある。 「あれ、どうしたのフレイン。行かないの?」  何の気なしに歩き始めたミューが、こちらを振り返る。彼は高位の神に会う前でも一切気負うことなく、ごく自然に振る舞っていた。  それを見たら、なんだか安心した。  ――まあ、正式な手続きを踏んでる時間はないしね。  バルドルなら、そんなことで怒りはしないだろう。むしろ客人としてもてなしてくれるのではないか。 「うん、じゃあ行こうか」  フレインはにこりと微笑み、バルドルの屋敷に向かった。道の途中でアクセルが作ったと思しきポストが設置されていたので、少しうるっとしそうになった。ますます早く会いたくなった。 「わー! 大きなお屋敷ー! ユーベルのおうちみたいー!」  と、ミューが屋敷の前ではしゃぎ回る。  バルドルの屋敷は三階建てのお城みたいな建物で、ユーベルの自宅によく似ていた。一人で暮らすにはいささか大きすぎるが、神々を招いてパーティーをするのなら、これくらいの規模は必要かもしれない。

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