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第690話(フレイン視点)

「! ホズ様……?」 「お前たちは……」 「あ、ホズ様だ! 久しぶりー!」  ミューが両手を振って喜んでいたので、フレインははてと彼を見つめた。 「ミュー、ホズ様と面識あったっけ?」 「あるよー。昔、人質として交換に出された時、ちょっとだけ戦ったことあるんだ。その時からホズ様は盲目だったけど、本当にすごく強かったよ」 「……この扉はミューの仕業か。相変わらず無茶苦茶なヤツだ」  ホズがやや呆れた顔になる。ミューのしたことならしょうがないな、と諦めているような表情だった。 「ホズ、何事だい?」  廊下の奥から、屋敷の主がやってきた。相変わらず見目麗しく、遠目からでも光り輝いて見えた。さすがは眉目秀麗な光の神といったところか。  フレインは胸に手を当てて丁寧にお辞儀をしてみせた。 「バルドル様、お久しぶりです」 「きみは……フレインだっけ? 父上の眷属(エインヘリヤル)の」 「はい。覚えておいででしたか」 「私は一度会った人は忘れないよ。何か特別なことでもない限りはね」 「ならバルドル様、アクセルのことは覚えていませんか?」  時間が惜しいので、フレインは早速核心に踏み込んだ。  するとバルドルは、顎に手を当てて言った。 「その子、もしやうちに来た人質の子かな……? 同じ屋敷で過ごしたはずなのに、どうもハッキリ思い出せなくて……」 「そうです、その子がアクセルです。私の弟で、あなたのところに人質として送られた戦士(エインヘリヤル)です」  そう言いつつ、懐からアクセルの木彫りを取り出す。それをバルドルに見せたら、彼は少し懐かしそうに目を細めた。 「上手だね……。彼、手先が器用だったもんね」 「アクセルのこと、思い出しましたか?」 「明確じゃないけど、彼と過ごした日々は覚えてるよ。彼、新しくポストを作ってくれたんだよね。世界樹(ユグドラシル)にあるポストだと出しにくいからって……。本当にいい子だったよ」  しみじみ言うので、フレインは確実な手応えを感じた。

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