690 / 2013
第690話(フレイン視点)
「! ホズ様……?」
「お前たちは……」
「あ、ホズ様だ! 久しぶりー!」
ミューが両手を振って喜んでいたので、フレインははてと彼を見つめた。
「ミュー、ホズ様と面識あったっけ?」
「あるよー。昔、人質として交換に出された時、ちょっとだけ戦ったことあるんだ。その時からホズ様は盲目だったけど、本当にすごく強かったよ」
「……この扉はミューの仕業か。相変わらず無茶苦茶なヤツだ」
ホズがやや呆れた顔になる。ミューのしたことならしょうがないな、と諦めているような表情だった。
「ホズ、何事だい?」
廊下の奥から、屋敷の主がやってきた。相変わらず見目麗しく、遠目からでも光り輝いて見えた。さすがは眉目秀麗な光の神といったところか。
フレインは胸に手を当てて丁寧にお辞儀をしてみせた。
「バルドル様、お久しぶりです」
「きみは……フレインだっけ? 父上の眷属 の」
「はい。覚えておいででしたか」
「私は一度会った人は忘れないよ。何か特別なことでもない限りはね」
「ならバルドル様、アクセルのことは覚えていませんか?」
時間が惜しいので、フレインは早速核心に踏み込んだ。
するとバルドルは、顎に手を当てて言った。
「その子、もしやうちに来た人質の子かな……? 同じ屋敷で過ごしたはずなのに、どうもハッキリ思い出せなくて……」
「そうです、その子がアクセルです。私の弟で、あなたのところに人質として送られた戦士 です」
そう言いつつ、懐からアクセルの木彫りを取り出す。それをバルドルに見せたら、彼は少し懐かしそうに目を細めた。
「上手だね……。彼、手先が器用だったもんね」
「アクセルのこと、思い出しましたか?」
「明確じゃないけど、彼と過ごした日々は覚えてるよ。彼、新しくポストを作ってくれたんだよね。世界樹 にあるポストだと出しにくいからって……。本当にいい子だったよ」
しみじみ言うので、フレインは確実な手応えを感じた。
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