693 / 2013

第693話(フレイン視点)

 手紙を書き終えたバルドルは、それを丁寧に四つ折りにして机から立ち上がった。そして窓を全開にし、ピィーッと指笛を吹いた。  それを聞きつけたのか、すぐさまフクロウがやってきてバサバサと窓の縁にとまる。 「これを父上のところに届けて欲しいんだ。なるべく早く頼むよ」  バルドルが手紙を差し出すと、フクロウは素直にそれを咥えてどこかへ飛んでいった。  てっきりポストに投函するのかと思っていたので、少し驚いた。 「ポストに入れるより、直接フクロウに頼んだ方が早いからね。きみがヴァラスキャルヴに着く頃には、父も手紙を読んでくれているはずだ」 「ありがとうございます……。いろいろお気遣いいただいて」 「弟を想う気持ちは、私もよくわかるからね。早くアクセルを取り戻しておいで。お礼はその後でいいから」  フレインは深く頭を下げ、急いで部屋を出て屋敷外へ飛び出した。  破壊された扉の近くではミューがホズに説教されていたが、ミューは聞いているのかいないのか、涼しい顔でペロペロキャンディーを舐めていた。 「あ、フレインおかえり~! 用事は済んだ?」 「うん、終わったよ。今からヴァラスキャルヴに行ってくる」 「あー、オーディン様のお屋敷かー。じゃあ僕も行くー」 「おいふざけるな。父上のところでも暴れ回るつもりか」  と、ホズが眉間にシワを寄せる。  それでもミューはしれっとした顔で、こんなことを言い出した。 「オーディン様は強い人が好きだから、ちょっと暴れたくらいじゃ怒らないと思うなー。扉破壊されたくらいで目くじら立てないでさ、ホズ様もバルドル様みたいに穏やかに生きようよ」 「お前が言うな。というか、自分で壊した扉くらい自分で直していけ」 「んー、僕工作はあまり得意じゃないからー。後でアクセル連れてくるから、ちょっと待っててよー」  ……ホズにここまでズケズケ物を言えるのも、ランキング一位の強みかもしれない。

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